ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 秋祭り開催RTA③
なかなかいい感じの進行速度だよな。
通話を終え、二人に経過を報告する。
「けっこう順調じゃねぇのかァ?」
ドッペルゲンガーも上機嫌で息子の頭を撫でた。
「……そうだな。それと、キクコが自宅にある“かき氷機”を持って来てくれるって連絡があった」
夏に使って残ってたシロップ類も一緒に持って来るという話だ、と御月は少し嬉しそうに言った。
「お!家庭用のかき氷機か。そんなに沢山は出来ないだろうが……祭りの雰囲気は出るよな」
御月も乗り気になってくれた様子なのが伝わって来て俺もテンションが上がる。
「たくさん屋台が出てきてよォ、ホンモノの祭りみてぇだなァ?」
「とうちゃぁー!あした、たのしみだねぇ!!」
ドッペルゲンガー親子も楽しみにしていることだし、何としても無事開催に漕ぎ着けねばならんだろう。
俺はもう一度手にしたスマホに視線を落とした。
次に連絡するのは……誰にすべきだろう。
花園リセか、マコトか。
ここはやはり、手堅くOKが出そうなマコトを誘って確定人数を増やすべきだろうな。
花園リセを誘う勇気がまだ出ない俺は、とりあえず大丈夫そうなマコトに声を掛けることにした。
マコトの番号に電話を掛ける。
それは随分と久しぶりのように思えた。
5コール目辺りで通話に出たマコトの声は随分と懐かしく感じられる。
「……ガックン?どうしたのこんな時間に?」
その声はひどく遠い存在のようにも思えた。
──────そうだよな。
俺だけがあれから何度も時間を戻ってるけど──────本来なら夏休みからそう時間は経ってないんだ。
マコトからすれば数週間ぶりの悪友との会話って感じなんだろうな。
でも。
今の俺にとっては、マコトと過ごした日々は遥か遠い日のようにぼんやりとしか思い出せなかった。
ましてや、コイツで童貞を捨てただなんて────────
俺だけがあの夏の日々を勝手に遠く感じてるだけなんだ。
「あ、いや別に。特に大事な用があるって訳でもねぇんだけどさ」
テンパった俺は咄嗟に適当な事を言ってしまう。
なに言ってんだ俺。大事な用に決まってんじゃねぇか。
「ガックン、どうしちゃったのさ?」
マコトが怪訝そうに訊いてくる。
「あ、いやその……お前さ、明日暇か?」
よかったら明日の夜、ちょっと出て来れね?という俺の言葉に対し、返ってきた返事は意外なものだった。
「明日の夜?うーん。日中なら出れるけど……夜はちょっと無理かな」
は!?無理!?




