ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 秋祭り開催RTA②
やっぱさ、祭りってのは雰囲気が大事だよなぁ。
通話を終えた俺は再び二人にそれを報告する。
なるほど、と御月が感心したように頷いた。
「……フランクフルトか。確かに、焼くだけで祭りの雰囲気が出るメニューだな」
そうそう、と俺も相槌を打つ。
「アメリカンドッグだと揚げなきゃいけねぇけど、これなら出来そうだよな」
揚げ物のメニューだとフライヤーだのなんだので大掛かりだが……鉄板だけで出来るフランクフルトは心強い。
「とーちゃぁ。あしたおまつり?」
俺達の会話を聞いていたのか、ドッペルゲンガーの息子は祭りというワードに反応する。
そうだぞ!楽しみにしとけよォ!と佐藤次郎(仮)は息子を抱き上げる。
「きゃはは!!おまつり!!」
小さな息子は歓声を上げる。
さて。
なんとなく道筋は見えてきたが……まだメンツが不十分だ。
俺はスマホをて手に取り、少し考えて概史に掛けた。
「あ。先輩。どうしたんスかw」
スマホからはいつもの調子の概史の声が聞こえた。
「あのさ。明日の夜とかちょっと出てこれるか?祭りがあんだけど」
俺がそう告げると概史はゲラゲラと笑いだした。
「祭りwww急にマジすかw」
どこであるんです?wwと訊いてくる概史に対し、俺は今までの経緯を説明する。
「ファーwwwまさかの主催ッスかwウケるwww」
概史はまたしてもゲラゲラ笑っている。
「で、どうだよ?手伝ってくれるか?」
俺の質問に対し、概史はさも当然だといった口調でこう答えた。
「こんな面白すぎるイベント、行かない理由とかないッスよwww絶対行きますし手伝いますってwww」
概史って奴はこう見えてノリはいいからな。
あ、そういえば、と概史はこんな提案をしてくる。
「ウチの物置に兄貴の持ってる古いエアガン?みたいなのが大量にあるんスけど……これとビンゴゲームの景品の余りとか組み合わせて射的屋とかどうッスか?w」
「マジで!?それ、お前に任せていいか!?」
予想以上に俺が食いついたからか、概史はがぜんヤル気になった様子だった。
「あ。いいんスか?おれが任されちゃっても?」
いやいや、マジで頼りにしてっからよ、と俺がオーバーに言ってみせると概史は更にテンションが上がった様子でこう言った。
「じゃあ、ウチの兄貴も誘ってみましょうか?おれから言えば打率上がるかもしれないッスよw」
なるほど、フーミンに関しては佑ニーサンに頼んではあるが─────弟の概史からさらにプッシュされたらより確実だよな。
「それも頼む!今回は人手不足でさ。お前のこと頼りにしてるんだぜ?」
概史はまたスマホの向こうでゲラゲラと笑った。
「秋祭りRTAとかイミフ過ぎて超ウケるって感じじゃないっすかwww絶対に全面協力しますってwww」
概史に丁寧に礼を言って俺は通話を終えた。
概史は確定、フーミンもかなりの確率で来てくれそうじゃねぇか。
俺はホッと胸を撫で下ろしたが──────問題はここからだ。
マコトに花園リセ、それに……夢野くるみと岬京矢が残っている。
────24時間以内にメンバーを集めて祭りを開催するってガチで俺に出来るんだろうか?
残り23時間くらいだな。




