ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 明日の予定は急加速
ちょっと長風呂し過ぎたかも。
風呂から上がった俺達は御月の自室に集まり、作戦を立てることにした。
冷えたポカリを飲みながらまず俺がやったのは小泉に報告することだった。
「ハァ!?祭りだと!?」
電話の向こう側から小泉の素っ頓狂な声が聞こえる。
ああ、と俺は自信を持って頷く。
「もうこうするしか手段は無ぇんじゃないのか?」
それとも何か?他に有効な方法って見つかったのか、と俺が訊ねると小泉は唸った。
「……まあ、お前の言うことにも一理あるし確かにある程度は実行可能ではあるが─────」
それにさ、と俺は追撃する。
「神社の境内で未成年含むメンバーで飲み会ってのは倫理的にも教育的にも不味いだろ?センセェだって一応は教員なんだし」
確かに、と小泉は相槌を打つ。
「叔父が不在時とは言え、飲み会だの宴会だのをやってたなんて知られたらタダじゃ済まないだろうな」
だが、祭りのリハーサルとか練習ってテイにすれば……どうにかやり過ごせるかもしれん、と小泉は続けた。
「リハーサル?」
俺が聞き返すと小泉はそうだ、と答えた。
「ウチの神社では毎年、十一月に例大祭を行ってるんだがな。その時の練習とかリハーサルって名目で小規模な祭りを実行するのなら──────」
怒られたとしてもまだ軽症で済むかもな、と小泉は考え込むような様子で言った。
「なるほど。じゃあ決まりじゃねぇか」
俺がそう言うと今度は小泉の方からこう質問される。
「そうは言ってもな、佐藤。“祭り”を明日に実行だぞ?しかも明日は金曜だ。日中は準備が出来ないが──────何か策でもあるのか?」
そうだよな。
ここに来て俺はノープランだったことに気付く。
祭りってことは屋台だよな。
こんなん一日も掛けずに準備して実行するなんて無理ゲーじゃねぇか。
俺が黙っていると小泉が呆れたようにため息をついた。
「やれやれ。自信たっぷりに提案してきたかと思えば……」
「それはそうだけど……じゃあ、何かいいアイデアって無いのか?」
俺がそう返すと小泉はこう切り出した。
「まあしかし───そこはある程度はこっちで準備可能だ。神社の倉庫に水槽二つと小さな綿飴機、ちょっとした鉄板が入ってる」
なんでそんなん持ってんの?と俺が聞くと小泉はこう答える。
「神社での例大祭は毎年十一月だと言ったと思うが……それとは別に、地元の子ども会が夏休みに小さいイベントをやってるんだ」
幼児や小学校の子を対象とした小規模なものだが、それ用の機材が置いてあるんだ、という小泉の言葉に俺はテンションがブチ上がった。
「は!?なんでそれを早く言わねぇんだよ!?そんだけありゃ完璧じゃねぇか!?」
「そうだな。鉄板で何を焼くか、っていう細かい所はともかく─────二つあるうちの一つの水槽でヨーヨー釣り、もう一つにラムネや冷えた飲料を入れるってのはどうだ?」
渋っていた態度とは裏腹に、小泉の提案は俺達を祭りに一気に加速させた。
「スゲェじゃんセンセェ!あとはメンバーさえ集まりゃ完璧じゃねぇか!?」
一気に現実味を帯びて来たな。




