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ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 水子供養、風車と卵

御月んちの寺ってデケェんだよな。

御月に事前に電話で確認し、佐藤次郎(仮)の息子─────弟というテイではあるが────も連れてきていいという事だったので三人で寺を訪れた。


「あの時見かけたのは、お前の従・兄・弟・達・だったんだな」


御月は納得したように頷く。


それにしてもお前達は本当によく似てるな、と感心しながら御月が寺の中を案内してくれた。


「え!?マジかァ!?お前んちってこんなにデケェのかァ!?」


佐藤次郎(仮)は水子供養の寺は初めてな様子で、キョロキョロと落ち着かない様子であちこちを見ている。


「とーちゃぁ、あんぱんまん!!」


御月にアンパンマンの菓子を貰ったドッペルゲンガーの息子は大興奮な様子で菓子の箱を握っていた。


「そういやぁよ、この前コイツに菓子詰め合わせくれたのってレイジだったんだよなァ?」


俺、なかなかこんなの買ってやれなくてよ、コイツときたら大喜びでさァ、と佐藤次郎(仮)が口にすると御月は笑った。


「……喜んでもらえたなら何よりだ。まだたくさんあるから、好きなだけ持って帰るといい」


寺の境内の至る所で色とりどりの風車が回っている。


それはさながら花の洪水のようだった。


「そうかァ、悪ィな。ホラ、お前からも礼言っとけよ」


佐藤次郎(仮)は息子に挨拶をするよう促す。


「……あっとう」


小さな手で菓子の箱を握りしめたままの息子はペコリと頭を下げる。


どういたしまして、と御月は目を細めて佐藤次郎(仮)の息子の頭を撫でた。


「……やっぱり小さい子ってのは可愛いな。うちは一人っ子だから兄弟が居る家庭が羨ましい──────」


まあ、佐藤次郎(仮)の方はそれなりに苦労してるんだろうが……


そうだろ、とドッペルゲンガーは胸を張ってこう言った。


「やっぱよォ、親バカかもしんねぇけど……ウチの子が一番可愛いって思うんだよなァ!」


「……親バカ?」


御月が不思議そうな表情を浮かべたので俺は慌ててフォローする。


「あ、いや!コイツらってちょっと家庭の事情が複雑でさ……兄貴が親代わりで弟を育ててるカンジだから!」


なるほど、と御月は頷いた。


「……俺と同級生なのにお前達は苦労してるんだな……今日は気兼ねせずにゆっくりしていってくれ」


境内を歩き、住居スペース側の建物に俺達は案内された。


「まあ……!よく来てくれたわねぇ!」


御月の養父母は俺達の訪問を歓迎してくれているようだった。


「……たくさんあるからどんどん食べて頂戴ね」


テーブルには鍋が置かれ、部屋にはすき焼きの甘い香りが充満していた。


すき焼きなんて何年ぶりだろう。


「……マジかァ!?こんないい肉、見た事ねぇぞ!?」


佐藤次郎(仮)は腰を抜かさんばかりの勢いでビビっていた。


「……これ。俺が昔、使っていたものなんだが────」


御月が子ども用椅子を持ってきてくれたので息子をそれに座らせる。


「あんまり小さい子は生卵は駄目だと言うけど……この子は大丈夫かしら」


御月の養母が心配そうにこちらを見る。


「あ、コイツ二歳未満なんで……まだ生卵は食わせてねぇんスよォ」


佐藤次郎(仮)が適切な受け答えをしていたのが衝撃だった。













コイツってデタラメな奴って思ってたけど─────意外に子育てだけはキチンとこなしてるのか?


小さい子って大人と同じものは食べちゃダメな場合もあるんだな……知らんかった

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