ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 破天荒大宴会
もしかして余計なこと言っちまったか?
飲み会か。
何かの糸口になるかと思って報告しただけだったんだが、予想外に厄介なことになりそうじゃねぇか。
「タイミングがいいんだか悪いんだか──────実は明日の夜から明後日にかけて、叔父が留守なんだ」
「え?」
小泉の発言の意図……いや、今後の流れがうっすらと理解出来た俺は思わず反射的に声を上げる。
「まさか明日、飲み会するとかって言わなねぇよな?」
俺が確認するようにそう発言すると、小泉は立ち上がった。
「いや、こんな千載一遇の機会を逃す手はないだろう」
すぐに参加者を集める手筈を整えないとな、と小泉は俺とドッペルゲンガーの顔を交互に見る。
「マジで!?飲み会やんのかァ!?」
佐藤次郎(仮)は深く考えてないのか、ノリノリな様子だ。
「飲み会自体は構わねぇけどさ、やっぱ完全再現って無理じゃね?」
岬京矢は時間を戻ったからゼンゼン面識ねぇし─────夢野くるみなんか引っ越しちまってるし。
都会で売れっ子インフルエンサーになってる上に全く絡みのない夢野くるみを呼び寄せるなんて無理ゲーだ。
「マコトや御月あたりは声掛けたら来るかもしれねぇけどさ、花園リセとかも難くね?」
深窓の御令嬢を神社の敷地内での宴会的な飲み会に呼び付けるってのが不敬過ぎるようにも思えた。
「────そこを何とかしてみせるのがお前達の腕の見せどころじゃないか?」
小泉の言葉に対し、またしてもハイテンションで佐藤次郎(仮)が反応する。
「面白そうじゃねぇか!?俺達のチームワークってヤツを見せつけてやろうぜ!兄弟!?」
いやいやいや……
チームワークもクソもねぇだろ。無理なモンは無理なんだよ。
既に乗り気になっている二人をどう説得すべきか俺が頭を抱えていると──────不意にドアがノックされた。
「どうぞ」
小泉が返事をすると美術準備室に入ってきたのは、水森唯だった。
水森の表情は明るく、やけに機嫌がいいように感じられた。
「小泉先生。遅くなりましたがこれ、日誌です」
今日の日直って水森だったのか。
小泉は日誌を受け取りつつ水森に声を掛ける。
「……ご苦労様。ところで、今日はやけに嬉しそうだな?」
何かいいことでもあったのか、と訊ねる小泉に対し水森はこう答えた。
「ええ。明日、久しぶりにくぅちゃんがこっちに帰ってくるんですよ」
え!?




