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ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 女の子はいつだって繊細

まあ、こんなトコに居そうな人物ではあるな。

そこに居たのは───────上野綾だった。


「あぁ!?お前、確か同じクラスの……」


白ギャルが珍しいのか、佐藤次郎(仮)は上野をしげしげと眺めた。


向こうの世界では黒ギャルの諸星キクコと接点があったようだが、上野綾とは全く絡みが無かったらしい。


「……佐藤っち達、何しにここへ来たの?」


まあいいけどさ、と言いながら上野は手にしたスマホの画面に視線を落とした。


「お前こそ何してたんだよ?こんな場所に一人でよ?」


俺が尋ねると上野は黙った。


まあ、スマホの校内持ち込みは禁止されてるからな。ここみたいにコッソリと使える場所で使うしかないんだが────────


そこで俺はふと、違和感に気付いた。


「なあ、上野さ────────なんか顔色悪くね?」


具合でも悪いのか、と俺が尋ねると上野はビクリと肩を震わせ、俺の顔を見た。


「……べ、別にそういう訳じゃないけど?」


上野は慌てて取り繕うように笑顔を浮かべ、スマホをポケットに仕舞った。


直前に一瞬、スマホの画面が目に入る。


不可思議な幾何学模様。


ギャルの間で流行ってんのか?何かの壁紙か?


「まあ、いいんだけどさ。体調とか悪いんだったら遠慮せずに佐々木のトコで休ませて貰えばいいんじゃねぇの?」


お前ら仲良いんだろ?気兼ねもねぇだろうし、と俺が言うと上野は表情を曇らせた。


「……ん。そういうんじゃないし」


しまった。なんか俺、余計なコト言っちまったかもな。


女子ってのはさ──────何かと身体が不安定になったりするんだろ?


小泉がそうだもんな。しょっちゅう貧血とかにもなってるって言うし。


彼氏でもなんでもねぇ奴に体調とか詮索されても嫌な気分になるよな。


俺は慌てて首を振った。


「悪ぃ。勝手に上野の縄張りに入り込んじまって。邪魔したな」


俺らもう行くから、と俺が言うと今度は上野が俺達を引き留めてくる。


「別にここってさ、あーしの縄張りとかそういうんじゃないし。佐藤っち達こそ何かここに用事があったんじゃないの?」


「いや、ちょっと猫とか探しに来ただけだからさ」


「……猫!?」


俺は簡単に子猫探しの経緯を伝えた。


「……なるほどねぇ。それで佐藤っち達が子猫ちゃんを探してたってワケ?」


おう!まぁな!お前、この辺で見てねぇか!?と佐藤次郎(仮)が威勢よく会話に加わる。


「うーん……あーしは見なかったなあ……」


上野は少し困ったような表情を浮かべた。


その額には汗が流れている。


やっぱり何か変だ。


俺は思い切って二人にこう言った。








「なあ上野。やっぱお前、具合悪いんじゃね?うちの兄貴に保健室まで送って行って貰えよ」


たまにはドッペルゲンガーも人の役に立ったらどうだ?

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