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ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 ルイーダの酒場

さて、どうやって子猫探しにコイツを付き合わせるかだが──────

「すまんな、ちょっと遅くなって」


俺がそう言いながら美術準備室のドアを開けると───────目に飛び込んできたのは疲労困憊の表情を浮かべた小泉の姿だった。


「……遅かったじゃないか」


床ににはブラックサンダーの空袋とエナジードリンクの空き缶が散乱している。


「おう!!!どこ行ってたんだよ弟ォ!!!?」


佐藤次郎(仮)はハイテンションでブラックサンダーを齧り、エナドリを飲んでいる。


「買い置きのストックが全部ヤられてしまったんだが……」


小泉が涙目で呟いた。


「なあ鏡花!!もう食い物とかねぇの!?」


ここってなんでもあるし最高じゃねぇの!?隠れ家みてぇでよォ!!と上機嫌の佐藤次郎(仮)は我が物顔で美術準備室を占拠している。


「もう無いぞ。今お前が食べてるので最後だ」


小泉は首を振った。


「……悪ィな、センセェ。俺がちょっと居ない隙に──────」


俺がそう言うと小泉は俺に訴えるような視線を向けた。


「ここはルイーダの酒場とかじゃないからな。手に負えないキャラを預かる場所でもないし──────」


私一人では無理だ。やはりどうにかお前が付いてやっていてくれないか?と小泉はゲッソリした様子で呟く。


この短時間の間に相当気疲れしたんだろう。


それに、担任の加賀が出張中なんだ。


余計な騒動やトラブルを起こせばそれらは全て小泉の責任になってしまう。


ああ、と俺は頷いた。


この惨状を見ればそれは痛いほど理解できた。


やっぱコイツを一人にしておくのは最悪だし────────かと言って小泉に見て貰うっていうのにも限界があるよな。


「なあ、兄貴。すっげぇいい場所が他にもあるんだぜ?」


俺がヤツを“兄貴”と呼んだのがよほどツボったのか、佐藤次郎(仮)は嬉々として絡んできた。


「……お!?俺のことを兄って認める気になったかァ!?それともやっと俺の偉大さがわかったとか!?」


佐藤次郎(仮)はバンバンと俺の肩を叩く。


まあ、呼び方一つでコイツの機嫌が良くなるってんならアニキでもオジキでもなんだっていいんだが。


「……ああ。兄貴が絶対に気にいる隠れ個室がこの学校にあるんだけどよ。行ってみねぇか?」


俺がそう言うと佐藤次郎(仮)は速攻でその話に食いついた。


「……マジかァ!?でもよォ、ここだって隠れ家的な個室じゃねぇか!?」


いや、と俺は首を振り、やや強調しながらこう言った。


「何せ向こうはWi-Fiも完備してる上にベッドもある。昼寝自由なのはメリットがデカイだろ?」


そっちにも小さい冷蔵庫はあるし、と俺が付け加えると佐藤次郎(仮)は目を輝かせた。


「は!?それってすごくね!?VIPルームじゃねぇか!?」


まあ、ある意味VIPルームではあるな。現在では佐々木専用ではあるが───────


「その上、情報通の専用コンシュルジュまで付いてんだぜ?マジで良くね?」


おいおい、大丈夫か?とでも言いたげな不安そうな視線で小泉が俺を見ている。


佐藤次郎(仮)はかなりの地雷的な人物ではあるが────────佐々木の事だ。仮にコイツを預けたとしても上手くあしらってくれるだろう。


「いいじゃねぇか!面白そうじゃん!すぐに行こうぜ!」


気の早い佐藤次郎(仮)は早くも美術準備室のドアに手を掛け、廊下に出ようとしている。


俺は小泉に目配せをしながら佐藤次郎(仮)の背中を押した。








「さ、行こう兄貴!VIPルームに行く前にこの学校の色んなトコに案内してやっからさ!」






こんなヤツ、本物のルイーダの酒場でだってお断りされるんじゃねぇのか?

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