ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 ハロー、パラレルワールド②
自由人だな、コイツ………
ドッペルゲンガーと男児は腹が減っていたのか、やたらと菓子類に手を伸ばす。
「───なあ、冷蔵庫の中のモン、貰っていいかぁ?」
勝手知ったる我が家、とでも言わんばかりにドッペルゲンガーは遠慮なく台所に入る。
「おいおいおい、他人ん家で何を好き勝手に──────」
そこまで言いかけて俺はふと疑問を口にした。
「なあ、もしかしてさ。向こうの世界ではここがお前の家になってるのか?」
ああ、そうだな、とドッペルゲンガーは冷やしてあったビールを勝手に手にしながら答えた。
「間取りは一緒だけどさ、細かいトコはゼンゼン違うのな。置いてあるモンとかもう別モンだし」
ドッペルゲンガーは缶を開け、勝手に晩酌を始めた。
「いやいやいや……ここは“お前の家”でもあるかもしれねぇけどさ、この世界線じゃ俺の家なんだし」
勝手にビール飲むとか有り得んだろ、と俺はさりげなく苦言を呈するが向こうは聞いている様子がない。
「気が利いたモンが結構入ってるじゃねぇか。まだあるんだしちょっとくらいいいだろ?」
気が利いたモンっつうかそれはお供えで貰ったものだ。
来客用とか特別な日用に取っておいた貴重な食料や飲料なんだが?
俺だって普段は飲まねぇようにしてるんだがいい気なものだ。
悪びれる様子もなくドッペルゲンガーはグイっと一気にビールを呷る。
─────なかなかいい飲みっぷりだ。
俺が感心していると、小泉が小声で話し掛けてくる。
「……おい、佐藤。コイツとお前はところどころ違いがあるようだな」
そうだろうよ、と俺は頷いた。
俺はやや下戸でそこまでアルコールは強くねぇんだが──────コイツはウワバミのようにガブガブと酒を飲んでいる。
それは“姿”が似ているだけで──────全くの別人のように思えた。
俺は横に居る男児の様子に目を向けた。
菓子詰め合わせの中にある[たまごボーロ]を美味しそうに頬張っている。
「……ちゃまごぼうろ!!」
男児はニコニコと笑い、ドッペルゲンガーは笑顔で男児の頭を撫でた。
「そうか、よかったなぁ!こんなん高くて普段はなかなか買ってやれねぇし──────」
そこでふと俺はさっきのやり取りを思い出した。
「なあ、さっきこの坊主がお前のこと『父ちゃん』て呼んでたけど──────」
父親代わりになって弟の面倒を見てんのか、と俺が尋ねるとドッペルゲンガーはあっけらかんと答えた。
「ん?いや、俺の息子だけど?」
は!?




