ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 ハロー、パラレルワールド
なんだか不可解過ぎる存在だ。
このドッペルゲンガーには───────何か奇妙な事情がある。
なんとなくだがそんな気がした。
小さな子どもも居る状況だ。ここで立ち話もどうかという流れにもなり、俺達4人はひとまず自宅へ移動することになった。
そこでドッペルゲンガーから聞かされたのはなんとも不可思議な話だった。
「……じゃあ何か?いつの間にかここに飛ばされてたっていうのか?」
俺の問いかけに対し、ドッペルゲンガーは頷いた。
「ああそうだ。なんか知らねぇけどよ、急に目の前が光って明るくなってよ、ガーッと身体が宙に浮いたみてぇになって─────」
気がついたらなんか変なトコに来てたっつうか、とドッペルゲンガーは答えた。
ちゃぶ台の上に置かれた二つの生徒手帳。
俺とドッペルゲンガーは同姓同名な上に生年月日や血液型、体重や身長まで全く同じだった。
「お前も俺と同じ名前とはなぁ。奇遇だな」
ドッペルゲンガーはどこか緊迫感の無い様子であっけらかんと言い放った。
「いやいやいや……奇遇ってレベルじゃなくね?」
俺のツッコミに対し、小泉もまじまじと俺たちの顔を見比べる。
「二人ともそっくりなんてもんじゃないぞ?一卵性双生児と言われても納得する程度には激似じゃないか」
“俺とドッペルゲンガーがそっくりである”という事実に対し、コイツ一人だけはそれを頑なに認めようとはしなかった。
「は?(威圧)」
俺とお前がソックリだとかよ、気のせいじゃね?第一、俺の方がつぇえし?とドッペルゲンガーは俺に対し凄んでみせる。
意味がわからない。
俺は改めてコイツの話を整理しようと試みる。
「まあ、どっちでもいいけどよ……それより、お前が元々居たトコってのはどんな感じなんだ?」
そうだな、と小泉も頷いた。
「とにかく、状況を把握しないとどうにもならんだろう。詳しく話を聞かせてくれないか?」
ドッペルゲンガーは茶菓子として出した饅頭を頬張りながらざっくりと答える。
「は?知らんけど。基本的にこっちと同じっぽいけどよ。住んでる人間も同じっぽいし────」
けどよ、とドッペルゲンガーは続けた。
「人間のキャラ……っつうか、中身?みてぇなのがちょっとずつ違う感じはするな。例えばお前とか」
ドッペルゲンガーは小泉を指さす。
「えっ……?私か?」
ああ、そうだ、とドッペルゲンガーは頷いた。
「鏡花が学校で先公なんざやってるだなんて考えられねぇな。俺の元いたトコじゃ巫女だったぜ?」
すかさず小泉はそこに食い付く。
「……いや、巫女の方も週末にバイトでやってるんだが─────そっちじゃ本業が巫女ってことなのか?」
ドッペルゲンガーは菓子器に入れられた饅頭に手を伸ばしながら答える。
「はー?あんま知らんしな。普段はそこまで絡みねぇっつうか。ただ、シンジのヤツと一緒の事が多いイメージだな」
「……シンジ?!シンジもそっちに居るのか?!」
俺の問いかけに対し、ドッペルゲンガーは饅頭に齧り付きながら頷いた。
「あー?まあ居るっちゃ居るけどよ。アイツ、俺のことを目の敵にしてやがるな」
そこはこっちも同じだな、と俺は思った。
それよりも。
別の世界線?から飛ばされて来たと思しきドッペルゲンガーだが───────
俺達が知らないだけで、そういう奇妙な世界線や時間軸がガチで存在してるっていうのだろうか?
考えたらスゲェことだよな──────




