ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 淫行疑惑
早いとことっ捕まえねぇとな。
社務所で軽めの食事を摂り、少し休憩した俺たちは再び街中に向かった。
俺の行動範囲内に居るということは自宅付近にいる可能性もある。
自宅方向に向かっていると、道端で不意に声を掛けられる。
「あ、先輩。先生と一緒っなんスかw」
振り返ると、そこに居たのは概史だった。
二人とも相変わらず仲良いんスねぇwという概史の言葉にいち早く反応したのは小泉だった。
「……な!?そういうんじゃなくて───────」
小泉は全力で首を振る。
「そうじゃなくてさ、俺ら今────────」
俺が説明しようとした瞬間、概史はゲラゲラと笑い出した。
「なんか今日の先輩、おかしくないっスか?www」
「は?」
俺が訊き返すと概史はニヤニヤとした表情を浮かべた。
「いつもだったらそのままなのにww今日に限ってガソリン満タンにして返してくるとかw」
どういう風の吹き回しなんスかw?と概史は揶揄うように笑った。
「は?ガソリン?何のことだ??」
「何って───たった今、先輩が返しに来たバイクっスよwwwなんかいいことでもありました?www」
概史は意味ありげな視線で俺と小泉を見る。
「は!?バイクって何の話だよ?第一、俺、今日は借りてねぇし……」
そこまで言いかけて俺は状況を察した。
“奴”の仕業か。
しかし、借りた後にガソリン満タンで返して来るってのもなんか律儀ではあるな。
「またまたぁwスッとボケちゃって先輩www」
いや、そうじゃなくて、という俺の話を聞かずに概史はまたニヤニヤとしながら言った。
「二人とも付き合ってるんスよねw?じゃあもう突き合ったりとかもしちゃったとかww?」
『ハァ!??』
小泉と俺は同時に反応してしまう。
「いやwww先輩が普段やんないようなことしてるってことはwwなんかいいコトでもした後なのかなってwww」
またしても俺より早く小泉がその言葉に反応する。
「断じてそれはない!!絶対にない!!」
小泉は更にブンブンと首を振り、ドッペルゲンガーについて簡単に説明した。
「へぇwww?先輩のそっくりさんっスか?ウケるwww」
概史はゲラゲラと笑った。てか、笑い事じゃないんだが。
「まあ、そういう訳なんだ。何かあったら教えてくれ。てか、俺とセンセェはそんなんじゃねぇし」
そう言った後、俺は特に強調してこう付け加えた。
「それより勝手にそういう事言うのは冗談だとしてもマジで辞めろ。俺はなんともねぇけど、変な噂が立ったらセンセェに迷惑が掛かるだろ?これでも嫁入り前の女なんだからよ」
へぇ、と概史はやや感心したように呟いた。
「なんか今日の先輩、やっぱカッコいいッスね」
だからそういうのよせって、と俺が言うと概史はこう答えた。
「逆に、今日の先輩の方がなんか別人みたいじゃないスか?これじゃどっちが本物かわかんないっすねぇw」
マジで洒落にならんからそういうの。




