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ep0. 「真夏の夜の爪」 54.貞操の守備と攻撃

みんな俺を置いていくんだな。

母親に捨てられ、マコトを失い、マサムネを取り上げられて佑ニーサンには置いていかれる。


これ以上の孤独と絶望があるだろうか。


少年は茫然自失となった。


いやいや先輩、ちょっと待って下さいよ、と概史がすかさずフォローを入れる。


「そうは言っても隣の市だし、車で三十分か四十分っスよ。一生の別れって訳じゃないし」


それに、と概史は続けた。


「先輩のことが嫌になったとかそう言うのじゃ無いっス。寧ろウチの兄貴のせいっぽいですし」


少年は昨日の泥酔した佑ニーサンの姿を思い出した。


概史の兄フーミンと何かあったのだろうか。


「おれは何も知らないし教えては貰えなかったんスけどね。由江さんがこう言ってるのはチラッと耳にしたんスよね。」


一呼吸置いて概史は続ける。


「“不信用の積立が満期になったみたい“って」


「どう言う意味なンだよ?」


少年には全く話が見えてこなかった。


「多分、文字通りっスよ。よくわかん無いんスけど、他のトラブルもあったと思います」


不信用。


つまりは信頼関係がもう維持できないと言う事か。


少年はぼんやり考えた。


「大人の事はよくわかん無いスけど。でも先輩は佑ニーサンに愛されてる気はしますね」


概史は溜息をついた。


佑ニーサンも言葉が足りないかもしれないけどウチの兄貴も無神経なとこあるっスからねえ、とちゃぶ台を指でトントンと弾く。


「自分の痛みには敏感なのに他人の痛みには鈍感とはよく言ったもんッスよね」


概史は頬杖をついて少年を見た。


「ウチの兄貴が佑ニーサンに対してなんかやったんスかね?」


「もしくはやらなかったのかもな」


少年は佑ニーサンの言葉を思い出しながら呟いた。


「人間は誰でも善人で居てぇよなぁ?悪人にはなりたかねぇ。だからこそ周囲には敢えて言ってない事もあるんだろうぜ?」


半分は佑ニーサンの受け売りだけどな、と少年は複雑な表情を浮かべた。


つまりどういう事だ?と少年は考えた。


佑ニーサンは黙って町を出るが概史を俺に寄越した。


しかも手土産付きでだ。


ヤらせたいのかヤッて欲しく無いのかどっちなんだ?昨日あんなにフルボッコにしといてか?


まあともかく、と概史は少年に促した。


「先輩を待ってる人が居るんでしょ?」


少年は黙った。


確かにそうなのだ。


ねえ、こういう諺ってあるじゃ無いッスか、と概史が人差し指を立てた。



『据え膳食わぬは男の恥』って。

結局、どうしろって言うんだ?守れっての?攻めろっての?

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