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ep6『さよなら小泉先生』 夢を見るかもしれない

なんだ!?

俺の身体は暗闇に投げ出され落下する。


「!?」


訳がわからないまま───────ザブンという音と共に俺は冷たい水面に叩きつけられた。


「……っ!??あああああ!????」


必死で手足をバタつかせるも、口の中に水が大量に流れ込む。


周囲は暗闇に覆われ全く何も見えない。


身体を少し動かしただけで手足が硬い石のようなものにぶつかる。


意図せず肘をぶつけてしまい、結構痛い。


ひたすら狭いということだけしか把握できない真っ暗で狭い空間。


胸から下は水に浸かっている。


底はどれくらいあるのかわからない。


ただ、足が届かない事だけは確かだった。


ここはひょっとすると───────例の井戸の中なのか?!


俺は両腕を必死で伸ばし、身体を沈めないように気を配りながら天井を見上げた。


上部も真っ暗で何も見えない。


まさかとは思うが……蓋が閉まっている?


俺は自分自身が絶望的な状況に置かれているということをようやく理解した。


石で出来たあの蓋は俺が全体重を掛けてようやく動くか動かないか、といった重量だった。


なんとか手足を伸ばして必死で天井部分まで登った所で、蓋が動かせなければそれまでだ。


俺はポケットに手を伸ばしてライターを取り出そうともがく。


しかし身体が水に沈まないように両手で支えているのが精一杯で、とても片手を離すなんて事は出来なかった。


身動きひとつ出来ない暗闇の中、冷たい水面に浸かった俺の身体の体温はどんどんと下がっていく。


このままだと数日後────いや、数時間後に絶命してしまうのは明らかだった。


途端に息苦しくなる。


まさかとは思うが、酸素が足りていない?


だとしたら。


数時間後はおろか、数十分後だって生命の保証はない。


最悪の場合─────数分後にはもう意識が無くなるのかもしれない。


恐らく、俺は元に居た世界線に戻って来れはしたんだろう。


けど、着地でミスったんだろうな。


あとほんの数十センチでもズレてりゃ井戸の外だっただろうに────────


俺は絶望的な気分で身体を震わせた。


井戸の中に落とされて死んだ貞子ってこんな状況だったんだな。


そりゃ、祟ってもしょうがねぇよな。


こんな状況、絶対気が狂うじゃねぇか。


俺だって化けて出てやろうって気になるし。


それでも。


俺は手足を壁面に伸ばし、上に上がる事を試みた。


簡単に諦めてる場合じゃねぇよな。


俺には守んなきゃいけねぇ約束があるんだ。


震える手足で水分を吸って重くなった身体を支える。


少しずつ、身体を上に移動させる。


どこに天井があるかなんてわからない。


だけど、進むしかないんだ。


しかし。


思った以上に冷えていた手足は悴み、重くなった身体を支えることが出来なくなっていた。


結構頑張って上まで登ったつもりだった。


けれど、自覚している以上に身体のダメージが大きかったんだろうな。


限界は思った以上に早く訪れ───────無様に壁面に手足を押し当てたまま、俺の身体は暗い水の底に吸い寄せられるかのようにずり下がっていく。


体力的にもう一回ここまで登るのはもう無理だろうな。


───────ここまでか。


そう思った瞬間だった。


人の話し声と共に頭上に光が見えた。


なんだ?


ズズズ、という大きな音と共に聴こえて来た声は───────聞き覚えのあるものだった。








「………おい佐藤!?やっぱりこの中に居るのか!??」

その声はまさか……

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