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ep6『さよなら小泉先生』 正しくはない選択肢

俺って口下手だからさ、難しいよな。こういう説明って。

「“正しい”とか“正しくない”とか……そんなのどっちだっていいよ……」


私、佐藤君と離れたくない、と零す小泉(13)の身体を俺はもう一度抱きしめた。


「……良くねぇよ。離れたくねぇのは俺だって同じだし───────絶対にまたお前に会いたいんだ」


だから、と俺は続けた。


「お前がこの波打飴なみだあめを食べていつもの日常に戻って……ちゃんと頑張ってくれたらまた会えるんだ」


頑張るって?と小泉(13)は聞き返す。


「お前が夢や目標に向かって努力して前に進んでくれたら……その延長線上に俺は居るから」


小泉(13)は俺の身体にギュッとしがみ付いた。


「じゃあ……ちゃんとその通りにしてもう一回会えたら──────そこから先はずっと一緒に居てくれるの?」


それは、と俺はまた言葉を濁した。


「もしももう一回会えたら……その時は何があってもお前の事を全力で守る。それは約束する。」


でも。


「お前を未来の結婚相手に引き渡すまで──────絶対にそばに居て守るから」


俺のその言葉に小泉(13)は反応した。


「え!?どういうこと?結婚?誰と?!」


俺は小泉(13)の頭をそっと撫でた。


「遠い未来の世界でお前は─────お前の事をすごく大切にしてくれる男と結婚して幸せに暮らしてるんだ」


俺はその未来に……ちゃんとお前を送り届けたいんだ、と言うと小泉(13)はブンブンと首を振った。


「そんなの嫌……嫌だよ!佐藤君の事を忘れて生きて、知らない人と結婚するのなんか───────」


小泉(13)の目から涙が溢れ落ちる。


「佐藤君以外の人なんか嫌だよ!!」


俺は小泉(13)の身体を力を込めて抱きしめた。


「そんなの俺だってホントは嫌だ……」


けど、と俺は続けた。


「俺は未来の結婚相手に────お前を無傷なままで引き渡す義務があるんだ」


俺は小泉(13)の顔を見つめた。


「嫌……嫌だよ!」


小泉(13)はなおも首を振る。


「佐藤君以外の誰とも結婚なんてしたくない─────!変な奴が来たらブン殴ってやるんだから……!!」


頼もしいじゃねぇか。


この調子なら鬼怒川豪志に出会ってもブン殴って切り抜けられそうまである。


「でもさ、小泉……俺の身体ってもう消えそうだし」


俺は手のひらをヒラヒラと振ってみせた。


さっきまではせいぜい手足の先端までだった透明な部分が広がって、俺の身体全体が半透明になりかけていた。


「……!!」


小泉(13)が息を呑んだ。


「なあ、このまま“間違った未来”に進んだらさ、俺たちもう一回会うことすら出来ねぇんだぜ?」


だったらワンチャン、生き残る手段に掛けてみねぇか?と俺は小泉(13)に改めて提案する。


「けど……!最終的に辿り着く未来に佐藤君が居ないんじゃ意味ないよ─────!」


小泉(13)はなおもそれを受け入れなかった。


「絶対に!他の人は嫌!結婚しない!!わざと嫌われてやるしこっちから婚約破棄するから……!」


なかなか強情だ。


こういう所は二十歳の方の小泉とおんなじなんだな。


まあ、そういうトコもコイツらしいって言えばコイツらしいんだが───────


じゃあさ、と俺は別方向からの説得を試みる。


「もしお前が“未来の正しい旦那”にフラれたり上手く結婚まで漕ぎ着けられなかったらさ──────俺が嫁に貰ってやるから」


え?と小泉(13)は驚いたような表情を浮かべた。









「もしもお互い、30まで独身だったらさ──────────その時は結婚しようぜ、俺たち」

こうでも言わなきゃ納得しねぇだろ?

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