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ep6『さよなら小泉先生』 暴走する警戒心

まあまあ美味そうな飴ではある。

俺は小泉(13)の頭をそっと撫でた。


小泉はまだシクシクと泣いている。


「なあ、泣くなよ……」


そう言いながら俺はごく自然に──────ポケットから飴を出した。


「ほら、これやるからさ……」


俺が差し出した飴を見た小泉(13)は動きを止めた。


「……ねぇ、佐藤君。これって───────」


波打飴(なみだあめ)でしょ?と小泉(13)は俺の目を見ながら言った。


「……え?」


俺が思わず反応してしまったのを小泉(13)は見逃さなかった。


「私、知ってるよ。だってこれ……スエカ婆ちゃんが作るの手伝ってるし」


小泉(13)は俺の学ランの裾を引っ張った。


「どうして佐藤君がこれを……?ううん。それより───────」


なんで私にこれを食べさせようとするの、と問いかける小泉(13)の目には涙が溜まっていた。


「私に全部忘れさせて……全部無かった事にしたいの?」


「違う!」


俺は少し食い気味でそれを否定する。


「私のこと……やっぱり面倒臭くなっちゃった?」


「馬鹿か!?なんでそうなるんだよ!?」


俺は小泉(13)の肩を掴んだ。


「違うんだ……これには理由があって──────」


そう言いかけて俺は思考を停止させた。


なんて言えばいい?


時間を戻る呪いとかどうとか─────いくら小泉(13)だとしても急には信じてもらえないだろう。


だけど、嘘なんかつけない。


「えっと……そうじゃなくてこれは……絶対お前にもう一回会いたいから─────」


小泉(13)は少し怒りと絶望を滲ませたような表情で俺を見る。


「それって波打飴(なみだあめ)を私に食べさせることとどう関係があるの?」


そうだよな。


急にこんなこと言われたって信じられないよな。


いきなり目の前のヤツが自分の記憶を消そうとしてるって知ったら……そりゃめっちゃ警戒して当たり前だろう。


「ああもう!じゃあ本当の事言うから!」


俺は頭を掻きむしりながらヤケクソ気味にこうぶち撒けた。


「俺、未来のお前がどうなるか知ってるんだよ!だから────」


お前が俺の記憶を持ったままの未来だと……お前は不幸になってるんだ、と俺はストレートにそのままを告げた。


「え?」


小泉(13)は動揺したような表情を浮かべた。


「“間違った未来”とか不幸とか─────第三者の俺が勝手にそう言うのって間違ってるかもしれねぇ」


けど、と俺は言葉を続けた。


「どうしてもお前には幸せになって欲しいし……“正しい未来”にちゃんと進んでもらいたいんだ」


「ちょっと待ってよ佐藤君……」


小泉(13)は呆然としたようにそれを遮った。


「佐藤君がどうして私の“正しい未来”とか“間違った未来”なんて知ってるの?」


それは、と俺は言葉を濁した。


「その……お前の未来を知ってるヤツに聞いたっていうか──────確実にガチなやつなんだ。それは保証する」


まあ、嘘はついてないもんな。


霊能者とか占い師ってこと?と訊いてきた小泉(13)に対し、俺は大袈裟に頷いて見せた。








「ああ、そうだ。このままだと”間違った未来“に進んじまう──────これは確実なんだ」


説明が難しいよな。

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