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ep6『さよなら小泉先生』 リロードされる感情

話のわかる爺さんで助かったな。

校長による寛大な処遇(?)が下されたとは言え─────あの騒動の翌日に教室で授業を受けるのは不味いという加賀の判断により……今日のところは自宅学習という名の自宅謹慎になってしまった。


しかし俺からするともうどうでもいい事だったんだな。


いつもの日常に戻れた。


それだけでさ、もうどんな事でもやってやろうって気になるんだよな。


あの悪夢みたいな世界から戻って来れたってだけで一生分の運を使った気がした。


その時の俺は自宅謹慎だろうがリモート授業だろうがなんでも受けてやろうって気分だったんだ。


俺と佑ニーサンは給食を待たずに午前中で家路についた。


佑ニーサンはちっとも俺を怒らなかった。


いつもそうなんだ。


「帰りに何か食べて帰ろうか〜?」


その時もいつも通りの佑ニーサンだった。


マイペースなのかもしれないし、俺を気遣ってくれてるのかもしれない。


俺にとって佑ニーサンはいつも何を考えてるのか全く掴めない存在なんだ。


だけど、佑ニーサンには迷惑掛けっぱなしだな、とその時改めて思った。


俺の気持ちを見透かしてるんだろうか。


佑ニーサンは怒るどころかニコニコと……いや、ニヤニヤって言った方が正しいだろうか?


俺の頭をポンポンと撫でた。


「いや〜でもビックリしちゃったね〜」


悪ィ、と小声で小さく呟いた俺の耳元で佑ニーサンはやや巫山戯て囁く。


「ガックン、ホントは何か別のことあったでしょ?図星?」


「何かって……」


俺はどう返答しようかと言葉を詰まらせた。


「なんかさ〜今日のガックンていつもと違う気がするし〜」


佑ニーサンは相変わらずの間の伸びたような口調で続けた。


「好きな子でも出来たんじゃないの〜?」


なんか雰囲気が違うし〜と言う佑ニーサンの言葉に俺はハッとした。


好きな子。


どうしてだろう。


その言葉を聞いて何故か真っ先に脳裏に浮かんだのは────────13歳の小泉の顔だった。


俺は元の世界線に戻れたけど……じゃあ、アイツはどうなんだ?


小泉が副担任として学校に居たってことは恐らく、“鬼怒川鏡花”はこの世界に存在しないものとしても───────


それじゃ、13歳の小泉はあの後どうなったんだよ?


もしかしたら。


まだ全部は終わってないのかもしれない。


俺にはまだやらなくちゃいけないことが残ってるんじゃないのか?


13歳の小泉に会わなきゃいけない────────


猛烈にそんな気がしてきたんだ。


そう思った俺は居ても立っても居られなくなった。


例の古井戸に行ってみよう。


いや、行かなきゃいけねぇんだ。


「悪ぃ、佑ニーサン。わざわざ来てもらっておいてマジで申し訳ないんだけど─────」


俺さ、急用を思い出したんだ、という俺の言葉に佑ニーサンは首を傾げた。


「え〜?そうなんだ〜?」


まあいいよ、行って来なよ〜?と佑ニーサンは俺の肩をポンと叩く。






「今日のガックン、やっぱりなんか表情が違うねぇ〜?」


佑ニーサンて普段は何やってるのか謎なんだよな。

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