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ep6『さよなら小泉先生』 思いを告げる

ドン引きされてるのは分かってるんだ。

またしても引き攣った表情を浮かべる加賀と小泉。


「俺が全部一人で勝手にやっただけで……この前のバイクの事だって───────!」


小泉は慌てて俺の口を押さえ、もう一度美術準備室に押し込もうとする。


「わかった!分かったからお前はもうあっちへ行ってろ!」


しかし俺は引かなかった。


「加賀……加賀センセイ!小泉は何も悪くねぇんだよ!俺が全部……俺が……!」


そう言いかけた瞬間に何故か涙が溢れてくる。


「は…?ちょっと……!どういう事なの!?」


始業前の学校の廊下で泣き喚くヤンキー。


それはどこから見ても異様な光景だっただろう。


俺にもその自覚はあるんだ。


だけど。


どうしてもこれだけは言わなきゃいけないって思ったんだ。


小泉は悪くねぇ。


悪いのは俺なんだ。


全部の責任は俺にある。


だけど、咄嗟にうまく言葉に出来ない。


俺はただ廊下で泣きながら喚いているだけの厄介な存在に成り果てていた。


側から見ればさぞかし異様な様子なんだろうな。


加賀は困惑しっぱなしの様子で俺から距離を取りつつ身構えている。


手負いの熊か何かを遠巻きに見ているかのような姿勢。


小泉が俺の首根っこを掴んだ。


「いいから!話がややこしくなるからお前はちょっと待ってろ!」


強い力で背中を押され、美術準備室に放り込まれた俺の目の前でピシャリとドアが閉まる。


廊下で話す小泉の声が聞こえた。


「ご覧の通り、かなりの情緒不安定でして────今は少し落ち着かせた方が良いかと……はい、父兄の方には私から連絡しておきますので……」


「もういいわ。とにかく……騒ぎを起こしさえしなければ少し授業は休ませてもいいから─────そこまで言うなら小泉先生の方でちゃんと見ておいてね?こちらからはもう何もしませんから」


はい、と小さく返事する小泉の声が聞こえた。きっとまた頭を下げてるんだろう。


コツコツとした足音が廊下に響く。


加賀が立ち去ったのか。


美術準備室のドアが開き、小泉が入ってきた。


「小泉!!」


俺が小泉に駆け寄ると小泉はサッとその身をかわした。


「……おい佐藤?何か悪い物でも食べたのか?」


一体どうしたって言うんだ?気味が悪いんだが?と小泉は怪訝そうな顔で俺を見る。


まあ、無理もないよな。いつもの俺を知ってる小泉からしたら不気味に思われるのも仕方がないかもしれない。


「何でもねぇよ。それより良かったぜ……」


こうしてまた話せて、と俺が言ったところで小泉は心底、不可解そうな表情を浮かべた。


「さっきから一体何の冗談なんだ?いつものお前らしくないじゃないか」


二日酔いか?アルコールがまだ残ってるのか?と尋ねてくる小泉の顔を俺は真っ直ぐに見つめてこう言った。







「なあセンセェ。俺───────アンタに伝えたいことがあるんだ」


そうだ、どうしても小泉に言わなきゃなんねぇ事があるんだ。

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