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ep6『さよなら小泉先生』 態度の理由

でも、確かめるのがちょっと怖いんだ。

シャワーを浴びた俺は制服に着替え、家を出た。


朝飯は喉を通りそうもなかったので食べなかった。


いつもは絶対食ってるんだけどな。


神社の周囲をグルグルと歩く。


怖くて小泉の部屋には行くことが出来なかった。


歩くうちに思考がクリアになっていく。


いろんな出来事が夢とも現実ともつかない様子で頭の中を駆け巡る。


天気は良く、朝の涼しい気温が心地良かった。


ウロウロと徘徊しているうちに学校に着いてしまう。


時計の針は7時半を指していた。


いくらなんでも早過ぎただろうか。


いつもの場所で煙草でも吸って待つか?


とりあえずカバンをロッカーの中に置いてくるか。


そう思った俺は教室へと向かった。


その途中。


廊下から人の声が聞こえてくる。


どうしてだかわからないんだが───────俺は反射的に物陰に身を隠した。


聞こえてくる声に耳を傾ける。


「……前にも言わなかった!?貴女が甘やかすからツケ上がってるんでしょう!?」


キンキンとした棘のある声と口調。


担任の加賀の声だった。


「──── 一部の生徒に人気があるからって調子に乗ってない?そうやって媚びるような態度だから舐められて当然なんでしょう?」


はい、仰る通りです、という消え入りそうな声。


俺の心臓がトクンと跳ねた。


そっと物陰から顔を出して声の主を確かめる。


「私の対応が行き届かないばかりに……加賀先生にもご迷惑をお掛けして申し訳ありません─────」


心底申し訳なさげに頭を下げているその声の主の姿を見た瞬間────────


俺は堪らず廊下に飛び出し、その声の主に抱き付いた。


「小泉!!!!」


俺はいつの間にかワンワンと声を上げて泣いていた。


「……は!?……佐藤!?」


小泉は驚いた様子で俺を見る。


「……ちょっと!?……え?!佐藤君!?」


加賀は引き攣った表情のままその場で固まっている。


「ちょっ……!お前はここで待ってろ!」


小泉は目の前の美術準備室のドアを開け、俺を押し込めて急いでドアを閉めた。


電気も点いていない薄暗い美術準備室の中にはアニメグッズが所狭しと並べられている。


部屋の端には小型の冷蔵庫が鎮座していた。


机の上に散乱するエナドリの缶。


見慣れたいつもの風景、いつもの美術準備室だ。


「これって……!」


もしかしてこれは───────上手くいったのか?


事態が把握できずに混乱していると、扉の向こうの廊下で話す声がこちらにも聞こえてきた。


「ちょっと!?小泉先生?さっきのは何ですか!?」


「……あの─────ですから、先程から申し上げている通り……佐藤は家庭の事情が複雑な面もあって────最近特に情緒不安定でして」


小泉の声が途切れ途切れに聞こえる。


「単なる言い訳かと思っていたら……あの様子だと本当みたいね。まあいいわ。」


加賀が吐き捨てるように言った。


「じゃあ貴女の希望通り、佐藤君に関しては一任する事にしましょう。今度からは周囲に誤解されないように気をつける事ね」


「はい……申し訳ありません。以後気をつけますので」


小泉がまたそう言って頭を下げている気配がする。


「全く……トラブルばかり起こされると他の生徒にも悪影響になるの。分かってるわよね?あちこちに迷惑を掛けないで欲しいわ」


何だこれは?


俺のせいで小泉が加賀に詰められてるのか?


もしかして……ここ最近、小泉が俺に塩対応だったのって──────加賀に圧力を掛けられてたからなのか?


居ても立ってもいられず、俺はまた廊下に飛び出した。


「加賀!……いや、加賀センセイ……!」


飛び出して来た俺を見て、小泉と加賀はギョッとした表情を浮かべた。


二人の前で俺は自分の心情を吐露した。







「─────小泉は何も悪くねぇんだ!俺が……俺が全部悪いんだし!」



俺のせいで小泉が怒られてんじゃん。

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