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ep6『さよなら小泉先生』 虚空を彷徨う透明な存在

それって……

小泉がゲーセンに出入りするようになったきっかけ───────────


俺が絶句していることに気付かない様子でシンジは続けた。


「その時に声を掛けて来たのが鬼怒川豪志……今の姉さんの夫になる人なんですけど」


どういうことだ?


鬼怒川豪志は─────小泉が好きになった相手じゃないのか?


「見た目が大人しいのに物怖じせず、格ゲーもまあまあ強い姉さんを気に入ったらしいんです。ただ、鬼怒川豪志がいくら口説いても姉さんはそれを受け入れなかったと聞きました」


意味が判らず俺は混乱しながらも話を聞く。


「恐らくそこで出て来たのが……例の[催眠セット]じゃないかって─────おれの推測に過ぎないんですけど」


そうすれば辻褄は合うんです、とシンジは考え込む素振りを見せる。


催眠セット。


小泉は鬼怒川豪志のことを好きという訳ではなかった───────?


思考がグルグルと頭の中を駆け巡り、冷静に判断できない。


「電子ドラッグの動画ファイルと脱法薬物のレシピから構成される[催眠セット]は『ジェリーフィッシュ』という隠語で呼ばれていると言うことまでは突き止めました」


ジェリーフィッシュ。


「それって……海月(クラゲ)って意味……ですよね?」


英単語はうろ覚えだったので念のためにシンジに確認する。


ええ、とシンジは頷いた。


「動画と薬物、二つの要素を組み合わせて発生する効果っていうのは……確かに、その名前に相応しいとも言えるかもしれませんね」


シンジはどこか絶望的な表情で吐き捨てる。


俺は正気のない鬼怒川鏡花の表情を思い出した。


その[催眠セット]を使われてしまった“対象者”は……深海の海を漂う海月(クラゲ)のように──────透き通るようにふわふわと虚空を彷徨い続けるっていうのか。


奇妙な名前のそれが──────この片田舎のエリアに静かに巣食っている?


俺は途端に背筋が寒くなった。


「でも、そこから先はもう情報が無さ過ぎて……」


なるほど、と俺は相槌を打つ。


確かに……概史みたいなキャラならともかく、シンジみたいな堅物で真面目な男子小学生が一人で調べていくには手詰まり感のある事柄である気がした。


しかし。


こんな田舎町……その上、絵に描いたようなDQNである鬼怒川豪志はどういったルートでこんな厄介なモノを入手したんだ?


ジェリーフィッシュというネーミングセンスと言い、動画と薬物を組み合わせる使用方法と言い─────このエリアには相応しくないような……どこか不自然で奇妙な印象を受ける。


都会の繁華街なんかで流行ってるとかって言うんならまだ理解できるぜ?渋谷とか新宿とか、クラブだとかさ?なんか、いかにもって感じじゃねぇか。


よりによってなんでこんなクソ田舎にそんなモノが持ち込まれた?










鬼怒川豪志のバックに─────黒幕である“何者か”が居る可能性があるんじゃないのか?

急に大掛かりな話になって来たな……?

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