ep6『さよなら小泉先生』 執念の着地点
そんなことが出来るのか?!
「それでは誰でも簡単にそれを手に出来る状況にあると……?」
恐ろしい可能性。
それはこんな片田舎のエリアには相応しくない単語と概念であるように思えた。
「……それが────よく判らないんです」
シンジは小さくため息をついた。
「鏡花姉さんの様子がおかしくなった5〜6年程前にそういったものが出回って──────いつの間にか有耶無耶になっていたそうなんですけど」
ここ最近、何故かそれが再び中高生の間で噂になってるって聞いたんです、とシンジは俺の顔を見た。
「小学生のおれが調べるにも限界があって……もし何かをご存知だったり、噂を聞いたりしたら教えて貰えませんか?」
中高生の間で噂?
それは『現物』を持ってる奴が出現したって意味だろうか。
5〜6年越しにか?
何らかの意図や─────組織的な関与があるとか?
情報を集めるにしても俺の少ない交友関係では限界がありそうだが─────
「ええ、中学のクラスでも少し聞いてみることにします」
とりあえず俺はそう答えた。
だが、これはどうしようもない事なんじゃないのか?
「まあ、今更どうにかなるって問題でもないんですけどね」
シンジはやや自虐的に呟く。
「お姉さんの身に変化があってから……一人でずっと調べていらしたんですか?」
ええ、まあ、とシンジは力なく頷いた。
「本格的に調べ始めたのは三年生の時からです。お下がりなんですけど、自分専用のパソコンを与えられたので……」
コイツは丸三年、姉として慕っていた小泉の為に─────執念でここまで辿り着いたのか。
俺はシンジの姿を改めて見た。
いつもの巫女の着物とは違う、何処かアンバランスなジャージに野球帽。
いつから小泉の為に食料を運んでやっていたのだろう。
この世界線ではたった一人で──────小泉を取り戻す為に戦っていたんだろうか。
俺のせいで何もかも滅茶苦茶にしてしまったのは小泉だけじゃなかったんだ。
シンジの生活や人生まで変えてしまったという事実に俺の胸は苦しくなった。
俺は一体、どれだけの人間を地獄に落としたんだ?
小泉……いや、鬼怒川鏡花の子供たちも──────母親と引き離されて暮らす生活を余儀なくされている。
俺はどうすれば償えるんだろうか。
「知人にもそれとなく聞いてみようと思うのですが─────状況を整理する為にももう一度、最初から教えて貰ってもいいですか?」
俺の言葉に対し、シンジはゆっくりと思い出すように話しはじめた。
「鏡花姉さんに変化があったのは6年ほど前だったと聞いています。それまでは決して夜遊びするような子ではなかったと家族の誰もが言っていました」
だけど、とシンジは続けた。
「ある男子生徒を探しに繁華街のゲームセンターに出入りするようになったそうなんです。鏡花姉さんと仲の良かった他校の友人という方の話では──────なんでも、初恋の相手だったって……」
───────────え!?
それって……




