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ep6『さよなら小泉先生』 奇妙な都市伝説

コイツの口からこんなワードが飛び出すって意外だな。

「……あ、すいません。急にこんなこと─────」


いきなり聞かれてもビックリしますよね、とシンジは慌てて続けた。


いえ、と俺は首を振った。


シンジがこんな事を口にするって事は─────何かあるんじゃねぇのか?


「その……“催眠アプリ”ですか?それに近いものというのは一体どういう─────?」


俺の問いかけに対し、シンジは言葉を選ぶように慎重に答えた。


「そうですね……最初はネットで広まっていた、ある種の都市伝説みたいなものだったらしいんですけど」


シンジはチラリと俺の顔を見た。


「佐藤さんは[電子ドラッグ]という言葉を聞いた事はありますか?」


「[電子ドラッグ]?」


聞き慣れない単語に対し、俺はそのまま聞き返す。


「そうですよね。こっちはご存知ないのも無理はないんですけど……おれも自分で独自に調べてみたんですが」


現在では『中毒性のある動画や音楽に対して使うネットミーム』的な意味合いで使われることが多いみたいなんですよね、とシンジは続けた。


「……なるほど。確かに、動画投稿サイトでタグに[電子ドラッグ]と付けられているものを見掛けたことがあります」


俺は相槌を打った。


「大体は『ドラッグみたいにクセになる曲や動画』に対するカテゴライズ・或いは感想、みたいな使われ方だと思うんですけど」


確かに、何度もループして見たくなる・聴きたくなるような動画のコメントで[電子ドラッグ]という単語を見た気もする。


「……ですが、今から約三十年ほど前────90年代の初頭頃でしょうか。本当に[電子ドラッグ]と銘打たれたCDやビデオが市販されて出回っていた時期があるみたいなんです」


「……え?」


それは概念や言葉遊びではなく─────”本物“の[電子ドラッグ]が実在したという意味だろうか。


「CDの方は脳にある種の周波数を与える……?のでしょうか。何かそういった影響や効果があるとジャケットに記載されていたようなんです」


「脳に周波数?α波とかそういうのは聞いたことがありますけど─────」


俺がそう言うとシンジはそれに反応した。


「そうですね。リラクゼーション系のCDが『α波でヒーリング』なんてキャッチコピーで売られているのを目にしたことはあります」


話が見えてきたような見えてこないような。


よく判らないながらも、俺はできる範囲で相槌を打つ。


「なるほど。リラクゼーション系のCDがα波で癒しの効果があるというのなら、電子ドラッグのCDというのはその逆で……別の周波数で脳に奇妙な効果をもたらすという──────」


そういう事ですか?と俺が訊ねるとシンジは大きく頷いた。


「ああそう!それです!おれが言いたかったのは!」


説明が下手で申し訳無いんですが解って貰えて良かったです、とシンジは安堵の表情を浮かべた。


「つまり、”催眠アプリ“のように─────人体に何らかの影響を及ぼす電子機器やプログラムが実在すると……?」


コイツはマジで言ってんのか?


まあ、ここまで聞くと荒唐無稽っていう話でもないような気もしてくる。


確かに、リラクゼーションやヒーリングの曲やCDがあるならその逆があってもおかしくねぇよな。


そこからが複雑なんです、とシンジは難しい表情を浮かべた。


「90年代初頭に市販されていた[電子ドラッグ]には動画版であるVHSビデオの形式のものもあったらしいんですけど」


2000年代の半ばから後半にかけての時期、ある動画投稿サイトにその電子ドラッグが転載されていたようなんです、とシンジは更に続けた。


「VHS版の電子ドラッグというのは元々は大したものではなかったようなんです。そもそも市販品ですからね。出回りはじめのCGのような、今から見ればチープな出来具合であるものらしくて」


だけど、とシンジは強調するように言った。


「エンコード、って言うんですか?動画投稿サイトにアップロードする際に元の映像の形式を変換する必要があるらしいんですが──────その際に何らかの偶然が重なって……」


次のシンジの言葉を聞いた俺は不意にドキリとした。










「動画サイトに投稿された電子ドラッグはある種の『本物』に変換されていたそうなんです」



なんか思ってたのと違う方向の話になってきたな。

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