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ep6『さよなら小泉先生』 14歳、たった一人の戦争

昨日からオールだもんな。

一人になった俺はなんとか概史の家に辿り着いた。


昨日の昼からノンストップでずっとあちこち動いてたからな。


いつもの俺なら疲れてクタクタになっててもおかしくないんだが───────


今の俺は不思議と何かに満たされていた。


血だらけで髪も滅茶苦茶、服に至っては泥だらけな上に生乾きの悲惨な有様だ。


周囲はすっかり明るくなっている。


ズタボロの俺を見た概史がいつものように笑い飛ばしてくれたことは救いだった。


「ちょwwwどうしたんスか先輩ww」


どこで戦争してきたんスかw?と揶揄い半分に聞いてくる概史に俺はこう答えた。


「逆かもな」


今から決着付けに行くんだよ、という俺の答えに対し、概史はいつものようにまたゲラゲラと笑った。


「マジスか?なんかカッコいいッスねww」


そうだ。


これは俺が始めちまった戦争だからな。


自分でケリを付けるしかないんだ。


生半可な俺が引き起こした事態。


俺は俺のやったことに対して責任があるんだ。


何もかもを終わらせる。


この間違った世界を終わらせるんだ。


「ガソリン、今度バイト代が入ったら入れるから勘弁してな」


そう言いながらキーを概史に渡すと概史はふと真顔で俺の顔を見た。


「ガソリンは別にいいッスけど……先輩、もしかして女絡みッスか?」


なんで、と俺が聞き返すと概史はどこか不思議そうな表情を浮かべた。


「いや……なんとなくッスけど──────なんかいつもと雰囲気が違うなって」


俺はドキリとした。


コイツ、さすが非童貞なだけはあるじゃねぇか。無駄に鋭いな。


「さあ、どうだろう?」


俺が適当にはぐらかすと概史はまたゲラゲラと笑った。


「もしかして先輩、なんか捨てて来てませんw?」


例えば童貞とか、と概史は悪戯っぽく言い放つ。


「捨てて来た──────確かにそうかもな」


確かに俺は、“何か”を捨てて来たかもしれない。


童貞以上の重みのある───────“何か”。


それが何かは今はわからない。


だけど。


確実に前に進むって確信が今の俺にはあるんだ。


じゃあな、気を付けてガッコ行けよ、と俺が声を掛けると概史は真顔でこう答えた。











「なんか、今日の先輩────────やっぱちょっとカッコいいッスね」



よせや。照れるだろ。

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