ep6『さよなら小泉先生』 好奇心は猫以外も殺す③
小泉ってこんなアクティブだったっけ?
「ちょっ……!」
変な声が出てしまい、思わず俺は口元を手で押さえる。
「何やってんだよお前……!」
予想外の小泉(13)の行動に俺は少しパニックになった。
「何って……お返しだよ?」
佐藤君だって同じことしたんだから一緒じゃない、と小泉(13)は俺の顔を見上げる。
「いや、そうじゃなくてさ─────」
お前、男にこういうことすんなよな、とつい筋の通らない事を口走ってしまう。
こっちから小泉(13)に仕掛けておいてさ、俺が言えるような義理じゃないんだけど。
だが俺の言葉を更に遮り、小泉(13)はまたしても特大級の爆弾を投下する。
「でも佐藤君、さっきから─────────硬いものが私に当たってる……」
俺は小泉(13)を押さえ込んで組み敷いてるつもりだったんだが、さっき身体を弄られた拍子に少し体勢が崩れてたんだな。
意図せず小泉(13)に撓垂れ掛かかった感じになってしまってたんだが─────
俺の下腹部を小泉(13)の身体に押し付けるように密着してしまっていた。
「〜っ!!」
咄嗟に俺は小泉(13)の身体から自分を引き剥がすように離そうとした。
わざとじゃないんだ。
けど、俺だって思春期の健康な男子なんだ。察してくれよ。
俺の顔は火が出るくらいに真っ赤になっていたのかもしれない。
「……あ、えっと……さっきのはわざとじゃなくて」
最初の勢いは何処へやら、俺はすっかり気が動転してしまっていた。
「……別にそういうつもりじゃ」
「じゃあ、どういうつもりだったの?」
小泉(13)はこっちを真っ直ぐに見つめてくる。
頼むからそんな目で俺を見ないでくれ、お願いだから。
「……その、お前があんまり無防備でガードしなさ過ぎだから──────」
えっと……つまり、と俺は必死で考えを巡らせた。
「……ねぇ?佐藤君」
小泉(13)は怒る様子も嫌がる様子も見せず、静かにこう言った。
「それで、ここから先は───────どんなことするの?」
そんなこと、俺にだってわからない。
だって知らないんだ。経験なんてないんだからさ。
「ここまでされて嫌じゃないのか?」
それに、と俺は上擦った声で問いかけた。
「……お前が思ってるようなモンじゃないし絶対やめといた方がいいぜ?」
言葉とは裏腹に俺の身体は限界まで昂っていた。
ドクドクと脈打つような熱を帯びた体温。
あらゆる感覚がお互いの皮膚と荒い呼吸から伝わってくる。
言葉と身体と感情、それに行動。──────何もかもがバラバラであるようにすら思えた。
ここまで来たらもうお互いに止められないだろ?




