ep6『さよなら小泉先生』 公開処刑
最悪な状況じゃねぇか。
「気持ちは分からんでもないが─────こういった状況の場合は大人と警察に任せておくのが一番いいんじゃないのか?」
小泉の……まるで幼子を諭すかのような口調がさらに俺を苛立たせた。
確かにそうだった。
俺のやった事は単なる自己満足でしかないのか。
校舎の窓からは全校生徒が顔を覗かせ、俺と小泉を見つめていた。
公開処刑を喰らったのは俺の方だということに今更ながら気付く。
カッコつけてバイクで登場した挙句─────小泉にぶっ飛ばされて地面に転がされてんだ。
メンツもクソもないだろう。
しかも、佐々木に至ってはキッチリ録画までしているだろうな。
俺は無言のままバイクに向かった。
「……おい!?どこへ行くんだ!?」
話はまだ終わってないぞ!?と叫ぶ小泉に対し、俺は振り返らずにこう答えた。
「またゴチャゴチャうるさく言われそうだからな。とりまバイク置いてくるわ」
多分、また校長室に呼び出しだろうな────────
学年主任と生徒指導の教師、教頭と担任の加賀も揃い踏みだろう。
今回は作文用紙何枚分の反省文を書かなきゃなんねぇんだろうな。
俺は最悪な気分を引き摺りながらバイクに跨り、エンジンを掛けた。
何もかもがめんどくせぇ。
バイクを走らせながら俺は───────自己嫌悪に陥っていた。
俺は何をやってるんだろう。
何度も時間は戻ってるんだ。
前とは違う世界線。
『今回の』世界線の中であの二人組がどんな目的で何をしていたか、なんて俺は殆ど知らなかったんじゃないのか。
確証も得られていないのに────────
確かに、俺が憶測と怒りの感情だけで独断専行してしまったことの非は─────認めざるを得なかった。
最低でも小泉に相談なり連絡なりをするべきだったかもしれない。
だけど。
俺はアイツらがどうしても許せなかった。
何度時間を戻ったとしても、アイツらは弱い立場の女子小中学生を狙って来るだろう。
目の前にいる奴らを見て見ぬふりして見逃すことなんて─────俺には出来なかったんだ。
概史の家の近くまで着いたので、エンジンを切る。
ゆっくりと静かにバイクを車庫に入れ、鍵をこっそりとキーボックスに戻した。
フーミンは寝てるのか、それとも不在なのか。
シンと静まり返った概史宅を後にし、大通りに出た辺りで着信音が鳴った。
佐々木からだった。
録画されたのをネタにされそうだな




