ep6『さよなら小泉先生』 →←↙↓↘→+P
コイツ、小学校カーストトップなんだよな。
ワンコールしてすぐに切る。
30秒程で概史から折り返しが来た。
弁当を食い終わって昼休憩だったのだろう。
「珍しいっスね。どうしたんスかw」
小学校は当然、スマホの持ち込みは禁止だが───────
厄介なことこの上ない“問題児”なので担任も見て見ぬふりをしてるんだろう。
だが、こういう状況の時にはすぐ連絡がつくのは助かる。
「なあ、今からバイク借りていいか?」
「あ、いいっス よ。鍵はいつもの場所に掛けてあるんでw」
勝手に使ってくれて構わねぇっスけど、といつものニヤニヤした様子で概史は返事する。
「パクられないように気ィつけて下さいねww」
ああ、悪ィな、と俺は短く答え電話を切った。
俺らの住んでる田舎だとさ、留守中に鍵とかしてねぇ家とか多いんだよな。都会じゃ考えられねぇだろうけど。
と言っても概史んちは兄貴のフーミンが昼間爆睡してることが多いんだな。
完璧に留守って訳じゃねぇけど、大体玄関の鍵は開いてんだ。
概史んちの玄関に入ってすぐ真横にあるキーボックス。
そこにバイクの鍵はいつも掛けてあんだな。
校舎を出て、俺は後ろを振り返った。
屋上の手前の踊り場の階段───────そこで佐々木は午後の間ずっと見張ってるんだろうな。
佐々木の勘は割とよく当たるんだよ。そこんとこはやっぱスゲェよな。
って事はさ。
今日辺りビンゴって可能性が高いな。
奴らが来る。
俺はその足でスエカ婆ちゃんの店に寄った。
少し買い物をし、『学校はもう終わったんきゃあ?』と言う婆ちゃんの質問を適当にかわして概史の家に向かった。
概史の兄、フーミンが寝ている可能性を考慮してそろりと玄関に侵入する。
キーボックスからキーを抜き取り、ポケットに静かに入れた。
マリア像の楕円形のメダルが付いたキーホルダーが揺れていた。
ガソリンは満タンな様子だった。
ちょっと借りるぜ、と独り言を呟きながらそろりと押し歩きする。
フーミンを起こさないように静かに距離を取り、大通りに出た辺りでエンジンを掛けた。
見つかるとちょっと厄介だからな。