ep6『さよなら小泉先生』 そこでインド人を右に
秘密基地みたいな場所で遊ぶゲームってのも悪く無いよな。
俺と小泉(13)の実力は拮抗していた。
勝負の結果は五分五分と言ったところだった。
小泉(13)の家庭が厳しく、自宅にはゲーム機が無いと言っていたが───────
ちょこちょこ概史の家で遊ばせて貰っている俺と、数年間のブランクがある小泉(13)。
この条件で引き分けってのは小泉(13)がなかなかいい線の実力の持ち主って事だよな。
俺たちはモバイルバッテリーの電源が切れるまでいろんなゲームで対戦した。
(NEOGEO mini には給電用にUSB Type-Cの端子がある)
久しぶりに充実した対戦だと思った。
それから俺達は数日の間、漫画はほったらかしで対戦に没頭した。
だが、この日課にも少しずつ変化が訪れていた。
勝敗の比率である。
最初のうちは拮抗していた対戦だったが、回数を重ねるに連れて俺が勝つことが自然と多くなった。
理由は明白だ。
俺が小泉(13)のパターンを“読める”ようになってきたからだった。
テリーやリョウなんかの兄貴分キャラが好きだと言っていた小泉(13)だったが、実戦で使用するキャラは違っていた。
小泉(13)が使うのは舞やアテナ、ユリといった女性キャラが多かった。
めくりを多様し、三角飛びからの遠距離ジャンプキック→近距離立ち強キックからの必殺技、というパターンが多いのだ。
(舞の場合だと必殺忍蜂が最後に来たり、状況によっては超必殺忍蜂だったりする)
要は、ボタン一個で出来るお手軽な繋ぎなんだな。
それは他のゲームでも概ね同じ動きだった。
最初はちょこまかと飛び回る小泉(13)に翻弄されもしたが、見切ってしまえばこっちのものだ。
間合いに飛び込んでくる小泉(13)を片っ端から対空技で撃ち落とす。
小泉(13)が無鉄砲に飛び込んで来るたびに強ライジングタックルや強鬼焼きで迎撃するのだ。
それだけで俺の勝率はグンと上がって行った。
最後に性懲りも無く飛び込んできた小泉(13)のトドメを八稚女で刺し、3タテを取った瞬間だった。
小泉(13)はコントローラーを握ったままポカンと口を開け、その後キャアキャアと騒ぎ始めた。
「嘘ウソ!!なんで!???私と佐藤くん、互角だったでしょ!」
なんでなんで、と納得が行かない様子の小泉(13)に俺は種明かしをした。
「……いや、黙ってたけどさ、お前の攻撃って毎回ワンパターンだし──────」
次にどう動くかってのが判っちまうんだよ、と俺が教えると小泉(13)は素っ頓狂な声を上げた。
「え!??ウソでしょ!?」
嘘じゃねぇし、と俺はそれを否定した。
「なんなら格ゲー以外の行動パターンまで全部先読み出来る気もするぜ」
俺がそう言うと小泉(13)は顔を真っ赤にした。
「……佐藤くんって……私のこと全部お見通しなんだ」
まあ、見てれば全部分かるよな。