ep6『さよなら小泉先生』 実践者と新参者
ずっと一人で寂しかったんだろうか。
こうも手放しで面と向かってこんなこと言われたら戸惑うよな。
だって相手は小泉だぜ?
なんで俺と一緒で楽しいんだよ?
大人の小泉と俺の間にはゼンゼン共通の趣味とか無いしな。
感性も感覚もまるで合わないように思う。
呪いに関連する事案や食い物がない時になんか食わせて貰うってシチュ以外だと絡みとか特に無ぇし。
特に、大人の方の小泉の趣味が1ミリも理解出来ねぇ。
アレだろ、コンビニでよく売ってるアニメのくじとかバカみたいに買い込んでたりするし部屋も車もフィギュアだらけだ。
乱雑な部屋には本とポスターだらけだが、俺が見たことないようなジャンルのモンばっかりだし。
小泉(13)は俺なんかとつるんでないでもっと趣味の合うヤツと過ごした方がいいんじゃないだろうか。
まあ、それが難しいからこそ今こうして俺と駄弁ってるんだろうが────────
俺は途端に小泉(13)が可哀想な存在に思えて来た。
俺みたいなのと一緒に居るしかない上に─────それでも『楽しい』って言い張る小泉(13)。
本当だったらもっとアニメや漫画に詳しい奴らと一緒に居るべきじゃないのか。その方が絶対楽しいに決まってるんだ。
でも……クラスで孤立した状態から“同じ趣味の親しい友人”てのを見つけ出して距離を縮めるってのは難易度が高過ぎるよな。
クラス内のカーストの残酷さってのは俺にも理解できるから余計に心配になってしまう。
じゃあ、俺は小泉(13)に対してどうしてやったらいいんだろう。
しばらく考えて、俺はある結論に達した。
小泉(13)に本当に気の合う親友が出来るまで、俺が代わりにガチめのオタク仲間になってやればいいんだ。
まあ、有名タイトルの作品くらいなら概史の家で見せてもらった事はあるし──────
小泉(13)が一番ハマってるジャンルとかは把握してないが、今から履修すればある程度は追いつくかもしれない。
俺は思い切って小泉(13)にこう言った。
「なあ、今まではザッと一緒に漫画を読むくらいだったんだけどさ、もっと詳しく俺に教えてくんね?」
俺、もっと色んな漫画やアニメを見てみたいんだ、という俺の言葉に小泉(13)は満面の笑みを浮かべた。
「……えっ!ホント?どうしたの急に」
俺はそれらしい理由をなんとなく適当に言ってみる。
「漫画って一人で読んでも面白いけど─────こうしてお互いに感想や考察を言い合ったりするのって楽しいなって思い始めてさ!」
俺って案外、サブカル系と相性いいのかも、と付け加えると小泉(13)は興奮した様子で身を乗り出した。
「え!!そう思って貰えたならすっごい嬉しいんだけど─────!!」
その瞬間、小泉(13)の胸ポケットから何かが落ちた。
地面に落ちた瞬間に中身がチラリと見えたそれは────────イラストがたくさん描かれた生徒手帳だった。
ん?なんか落ちた?