表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

434/1123

ep6『さよなら小泉先生』 もしかして: 黄泉戸喫

まあ、他に行くあても無いしな。

中学生の小泉と過ごすのにもすっかり慣れて来た頃だった。


こっちの小泉は誕生日をまだ迎えてないらしく、13歳であることが会話を重ねていくうちに判った。


そういや、小泉って誕生日が3月だもんな。じゃあ小泉(13)なんだな。


しかし、何度会っても大人小泉と小泉(13)が同一人物とは未だに思えないんだよな。


オタクなのは一緒なんだが、どうも性格が全く違う気がする。


大人小泉は面倒くさい性格なんだが、小泉(13)は素直な印象を受ける。


人間って歳を取ると気難しくなるってよく言うじゃん?そういうことなんだろうか?


最近、大人の方の小泉はどういう訳か俺に対して塩対応なんだよな。


気付けば自然に小泉(13)と居る時間の方が長くなっていた。


俺があんまりにも菓子類をバクバク食うもんだから、最終的には握り飯が毎回ラインナップされるようになっていた。(スエカ婆ちゃんのお手製らしい)


これがまた美味いんだよな。


具の種類は定番の梅干し、沢庵に加えて野沢菜や山菜の佃煮、昆布もある。これも全部スエカ婆ちゃんのお手製だ。


最初は『漫画を読む』という名目でここに通ってたんだが、最近では食うためだけに来てる感もある。


まあ、仕方ないんだよな。大人の方の小泉が飯を食わせてくれないもんだから、自然とこっちで食わせて貰ってるっていうか。


もう毎日が遠足みたいなもんだ。ペットボトルじゃ足りねぇからって飲み物もでっかい水筒に入れられてたりする。まあまあ本格的だ。


肝心の小泉(13)の方は嫌な顔一つせずに俺にどんどん食い物を食わせてくれるから助かる。


しかしコレってどういうカラクリになってるんだろうな?


もしも小泉(13)が生霊やスタンド、残留思念だとしたらこの食い物ってこの世に存在しない事になってんのか?


コレ食ってる俺ってなんなんだろう?


それとも、俺自身も呪われた忌み子だから幽霊の食べ物とか平気なんだろうか?


ま、そんな事はどうでもいいかもな。だって握り飯も菓子類もめっちゃ美味いし。


コンビニだとこういう手作りっぽい握り飯って無いしな。関係ねぇけど最近のコンビニのおにぎりってめっちゃスカスカしてね?


スエカ婆ちゃんの作る握り飯は一個ずつがめっちゃデカくてギッシリしてんだ。ボリュームが半端ねぇ。


俺んちの爺さん婆さんが生きてた時は婆さんの手作りってなんか苦手だったんだよな。


全体的に茶色いし地味だし田舎臭いし。ダセェし不味いもんだって思いこんでたんだ。マックとかピザとかがいいって我儘も言ったしなぁ。婆さんが作ったおかずを食べずにカップラーメンを食べようとして爺さんによく怒られたっけ。


けど、一人になった今なら解る。こういう手作りのものって店では買えねぇし、一番美味いんだ。


それに気付くのが爺さんも婆さんも死んだ後だってのが情けないよな。


マックでもカップラーメンでも一人の時ならいくらでも食べられるんだ。


けど、『誰かが自分の為に作ってくれたもの』ってのは金に代えられねぇ価値があんだよ。


今さ、家族が居るって奴は大事にしろよ。


俺みたいに家族が全員死んじまったらもう誰にも手料理なんか作っては貰えないんだ。


最悪の場合、そのまま死ぬまで一生食べられねぇって可能性もあるしな。


だから、小泉(13)が食わせてくれるスエカ婆ちゃんの握り飯ってのは俺にとって何より有難い物なんだ。


俺がバクバクと握り飯を食う横で、小泉(13)はただ笑って見ているだけだった。


「私の分も食べていいよ」と言って残りの分も差し出してくる。


冷静に考えたらさ、俺に菓子や握り飯を食わせる為だけのこの時間って小泉(13)にとって何のメリットもねぇよな。


ある日訊いてみたんだよ。小泉(13)にさ。


「俺とこんな事してて楽しいのか?」って。


そしたら小泉(13)はこう言ったんだ。









「佐藤くんとこうして一緒に居るだけですごく楽しいよ!」って。


食って大丈夫か気になるよなあ。まあ、食うんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ