ep6『さよなら小泉先生』 日常に潜む吸血鬼
俺には霊感とか無いし、ピンと来ないんだが。
「生霊?」
耳慣れない言葉に対し、俺は思わず聞き返した。
そんなものがあるのか?
そうだな、と小泉は頷き、説明を続けた。
「古来から割とメジャーな存在でな。源氏物語にも登場するし─────」
取り憑いて人を呪い殺す事もある、と小泉は俺に視線を向けた。
「は?呪い殺す?」
なんか急に物騒なハナシになってきたじゃねぇか。
てか、そんなヤベェのが昔からゴロゴロ居るのか?メジャーな存在?
意味がわからなさ過ぎる。
「でもさ、本体は生きてんだろ?生霊飛ばして攻撃とかさ、ほぼスタンドじゃん」
俺がそう言うと小泉もそれに同意した。
「まあ、確かにスタンドを思い浮かべて貰えればイメージしやすいがな。本人が制御出来ているとも限らないぞ」
ん?
「どういうことだ?スタンドの持ち主がスタンドをコントロール出来てないってこと?」
そっちのパターンの方が多いかもしれんな、と小泉は少し考え込むような素振りを見せる。
「それどころかスタンド─────自分が生霊を飛ばしているということすら気付かないケースが大半だろう」
???
なんじゃそりゃ?
「つまりさ、本人が知らん間にスタンドが勝手に動いて勝手になんかやってるって意味か?」
まあそうだな、と小泉は続けた。
「自分が生霊を飛ばしている意識は全く無くても、相手からエネルギーを吸収していく厄介なタイプも居るぞ」
エナジーヴァンパイアとかエネルギーヴァンパイアと言われる存在がそれに当たるな、と小泉は本棚から本を引っ張り出しながら解説する。
「ヴァンパイア!?それって吸血鬼じゃん?!」
幽霊の話を聞きに来たつもりが予想外に色んなモンスターの話に広がってしまい、俺はなんかビビってしまう。
「まあ、ヴァンパイアと言っても実際に血を吸われる訳じゃ無いからな。文字通りエナジーやエネルギーと言った生命力が奪われるんだが」
小泉は椅子に座り、パラパラと本のページを捲った。
「ゲームとかに出てくる“エナジードレイン”みたいなものか?」
俺がそう訊くと小泉は頷く。
「その理解で大体正しいな。尤も、ヴァンパイアと言っても見かけは普通の人間だ。本人にはその自覚が全く無いのも特徴として挙げられる」
「ヒェ……」
思わず俺は悲鳴を上げた。怖すぎんだろ。
「マジで現実にそんな種族が居るのか?アニメとかゲームの世界でなくてか?」
不気味過ぎて気持ち悪い気がしたんだが、小泉は平然とこう言ってのけた。
「意外に学校や職場でもよく居るらしいんだ。大抵はおとなしい人物が被害に遭ってるようだ」
これ読んでる奴のすぐ側に居たりするかもな。