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ep0. 「真夏の夜の爪」 ㊷恋をするには若すぎる

ウォッカは無限に飲めてしまう。

 「やあ、ガックン。何か用かい?」


少年がバーに居る佑ニーサンを訪ねたのは翌日のことだった。


概史の兄フーミンが経営するバーではあるが佑ニーサンが店番をしている日も多かった。


まだ明るい時間帯からずっと酒を呷っていたと思われる佑ニーサンは既に出来上がっていた。


少年はここへ来たことを後悔した。


しかし、他に聞ける人物に心当たりがなかった。


概史にだけは教えを乞う訳にはいかないと言う謎のプライドにも似た感情もあった。


完全に酔っ払いじゃねぇか、と少年は呆れた様子で佑ニーサンを見た。


しかし、と少年は思い直した。


酔っ払いなら却って都合がいいじゃねぇか。


何聞いても覚えて無ぇンなら遠慮も恥も外聞も知ったこっちゃ無ぇし。


聞くだけ聞いてズラかろう。


 まーガックンも飲みなってば、と佑ニーサンはグラスに氷を入れる。


子どもはカルピスでいいよね、と原液を濃いめに注いでいる。


ゲロ甘じゃねぇか、飲めねぇぞそんなん。


いや、すぐに帰るンで、と少年は若干遠慮する。


酔っ払いに捕まったら話が長くなりそうじゃねぇか。


どうやって早めに切り上げて帰ろうか、と少年は考えを巡らせた。


 あのよ、と少年は佑ニーサンの正面に座る。


カウンター越しに佑ニーサンは激甘カルピスのグラスを出してきた。


少年はグラスには口を付けず単刀直入に豪速球な質問をぶつけた。


「なあ、セックスってどうやンの?」


えー?と佑ニーサンは揶揄うように少年を見て笑った。


「ガックンはー。誰とセックスするって言うのー?」


うるせぇよ、誰だっていいだろ、と少年ははぐらかした。


「もしかしてこの前のあの子?」


佑ニーサンはへらへらと笑った。


何でそう思ったンだよ、と少年はかなり後ろめたいような気分を隠しながら答えた。


「だって昨日、あの子ここと概史のとこに挨拶に来たよ?ご迷惑をお掛けしましたって」


あと撫子ちゃんからも聞いたよ。あの子のこと。


僕は気づかなかったけど、と佑ニーサンは付け足した。


昨日。


俺とマコトが会う時間の前って事なンか?


少年は黙ったまま目の前のグラスを凝視した。


「急に転校が決まったんだってね?」


少年は何も答えなかった。


本心では認めたくなかった。


嘘であって欲しかった。


だとしたらどうなんだよ、と睨みつけるように少年は答えた。


「好きなの?あの子のこと」


そう聞かれた少年は言葉を詰まらせた。


え?

好き?

好きって?

どういう意味だ?

俺が?

マコトをか?



少年の脳裏に昨日のマコトの姿がよぎった。


華奢な身体に銀色の髪、最後に静かに笑ったその寂しそうな横顔。


嫌いなはずなんかない。


マコトは大事な親友だ、と少年は思った。


けど、好きって?好きってどういう状態を指すんだ?


どこからどこまでが好きっていうステータスの状態なんだ?


「好き」と「大事」は違うのか?

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