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ep6『さよなら小泉先生』 真っ黒な衝動

いつもの朝はもうちょっと遅くまで寝てるんだけどな。

茶碗を洗い、身支度を整えて家を出る。


いつもより早めの時間だ。


俺は少し遠回りして、神社の方向に向かった。


朝の空気は澄み渡っている。


今の俺のドロドロした心情とは対照的に思えた。


直視したくない、真っ黒な感情と衝動。


引き摺り出されたそれは、身体と心の奥底に無意識のうちにねじ込んで隠していたものだった。


セックスって行為に意味なんて見出せなかった。


TENGAとかでいいんじゃねぇの?そう思ってた。


──────だけどそうじゃなかったんだな。


それ以外の全部────開始前から終わりまでトータルでひっくるめてセックスだって初めて理解できた気がした。


確信は持てないが─────


『相手を完全に自分のものにする』『相手に自分の全てを受け入れてもらう』って事なのか。


確かに、身体だけじゃない精神的な気持ちの良さっていうのも大きいよな。


最後の瞬間。


正直言って気が狂うほど気持ちが良かった。


俺って毎回、時間を戻って記憶を無くす度にあんな事してたのか?


嘘だろ?


こんなん誰だって狂うわ。


有史以来、人類はこうやって狂って来たんだなって今なら理解できる。


女で失敗して一夜にして失脚して来た偉人や政治家ってのは枚挙に暇がないが──────


確かに、今まで築き上げて来た社会的地位や功績を全部無くさせちまうような魔力があるよな。


それほどまでにセックスってのは男を狂わせるものなんだろう。


きっと本能なんだろう。


そこまで考えて、俺は自分が困惑している状況に気付く。


─────“呪い”は俺をどうしたいんだ?


俺がヤリ捨てしまくりのセックスし放題の人間になるように仕向けたい?


そしたらお望み通りバンバンとエネルギーが回収出来るもんな。


でも、そうだとしたらさっきの夢は悪手だろう。


あんなモン見せられたら余計に無理だわ。


よりによってなんで小泉なんだよ!人選ミスだろクソが!


言い知れない苛立ちと自分自身に対する嫌悪感で一杯になっていた俺は早足で歩く。


この苛々を何処にぶつければいいんだろう。


小泉の居る神社の前で俺は立ち止まった。


石造りの大きな鳥居。


いつもと変わらない様子でそれは静かに鎮座していた。


当たり前だよなあ。あれは夢だったんだから。


壊れてる筈なんか無いんだ。


そうだよな。


少しホッとした俺は学校への通学路を急いだ。










小泉に会わないことにはまだ確証は持てない。そんな気がした。


きっと俺は安心したいんだ。

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