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ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第十七夜 

ここまでが大変だったなぁ。

俺も小泉もここまでの作業で汗だくになっていた。


普通に考えて、そう難しい事ではないと思うかもしれない。


けど、俺らにとってはそうじゃないんだ。


俺はめっちゃ気ィ使ってるし、小泉はビビりまっくてるし──────


まあ、『有無を言わさず半ば無理矢理にでも突っ込む』っていうのでも成立するんだろうけどさ。


そういうのは俺が嫌だったんだ。


それに、そんな真似したら後で小泉に何をされるかわかったもんじゃねぇし。


とにかく、慎重にそっとやってここまで来れたって事は─────こっから先も同じようにやってけばちゃんと出来るってことの証明であるようにも思えた。









◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『役目』を『果たした』俺は─────────急いで小泉から自分の先端を引き抜き、ゴムを外した。


『”終わった“後、外さないままの状態だと漏れてきて妊娠するかもしれないから危ない』ってのは誰が教えてくれたんだっけ?


忘れたけどまあいいか。


まあ、どうせ時間を戻るんだし──────


妊娠なんてする可能性なんか無いんだけどさ。まあ念の為、用心しないとな。


俺はまだ温かいゴムを凝視した。


「結構出たなあ」


独り言のように呟いてから口を縛る。


タプタプしてるこれ全部に命が宿ってるのか。


まだ生きて泳いでる?


────何億くらい居るんだろう?


でもそのうち、息絶えて死ぬんだろうな。


可哀想に。


俺はそれをティッシュに包んで──────ゴミ箱にそっと埋葬するように沈み込ませた。


そのまま脱力した俺は布団に転がった。


もう体力も気力も残ってはいない。


無事に役目を終えた解放感と達成感。


言いようのない充足感に身体を支配されたまま、俺は天井を見上げた。


ふと横を見ると小泉も同じように天井を見上げている。


全く動かない。


もしかして怒ってる?


重責から解放されたのも束の間、俺は急激に罪悪感に襲われた。


俺、最後になんであんなことしちまったんだろう。


小泉が泣いて嫌がって『一旦止めて』ってずっと言ってたのに─────


なんで無視して強行しちまったんだろう。


後でキレられるのなんて分かりきった事の筈なのに。


途中まではあんなに慎重に進めたのに───────最後の最後で滅茶苦茶にしちまった。


無言のままの小泉が途端に恐ろしく感じてしまう。


────すっげぇ怒ってる?


それとも、ショックを受けて呆然としてるんだろうか。


痛みはまだある?


血は出てる?


途端に不安になった俺は小泉に話しかけた。


「なあセンセェ、大丈夫か?」


小泉は黙ったまま、微動だにしない。


ヤベェ、めっちゃ怒ってんじゃん。


「悪ィ、さっきのは悪気があったんじゃなくて─────」


早く終わらせた方がセンセェの負担が少ないと思って、と俺は取り繕うように言い訳した。


小泉は黙ったままなにも言わない。


ガチで本当に怒らせちまったらしい。


俺は慌てて上体を起こし、小泉の顔を覗き込んだ。


「……ゴメン。センセェ。痛い思いさせちまって──────」


そこまで言いかけて俺はふと異変に気付いた。


小泉は瞼を閉じたまま、動いてはいなかった。


「え?」


どうしたんだ小泉は?


は?









まさかとは思うが──────ショックで死んだりしてないよな?










嘘だろ?










は!?

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