ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第十六夜
こんなに大変とは思わなかった。
暗くてよく見えないし何もわからないが、この辺りだろうかという箇所を探す。
文字通りの手探りだ。
不意に──────更に柔らかい部分に指が深く沈み込む。
ここでいいんだろうか?
少し指を動かす。
ひゃっ!と悲鳴を上げて小泉が両掌で顔を覆う。
ここで正解なのか。
小泉の身体が小刻みに震えている。
怖いんだろうな。
俺はゆっくりと柔らかな箇所を押し広げるようにそっと動かした。
いきなり力を入れたりしそうになるのが怖かった。
小泉も初めてだろうが、俺だってそうなんだ。
急に大出血するかもしれない、となったら慎重にもなる。
トンカチで釘を打つ時みたいに急に深くぶっ刺すんじゃなくてさ。
ドライバーでネジを締める時みたいな感じだろうか。
かき混ぜるように慎重に少しずつ深い部分に進んでいく。
「……っ!!」
小泉は小さく叫びながらもなんとか耐えているようだった。
女子の身体って………いや、女子に限らないかもだけど──────
人体の内部って柔らかいんだな。
まあ、内臓みたいなもんだもんな。
ちょっとでも油断したら傷つけてしまうんじゃないかって心配になる。
俺だって本当に怖いんだ。
確かにさ、俺にだって身体的な欲求っていうか─────そういうのが無いって言ったら嘘になるだろうけどさ、それ以上に怖いんだ。
失敗して───────弱くて繊細で敏感な箇所を壊してしまいそうになるのが怖くて堪らない。
きっと俺は何も知らないんだろう。童貞だからな。
だからこそ、未知の部分が余計に怖く感じるのかもしれない。
一度は腹を括った筈なのに───────俺ってこんなにビビりだったのか?
わからない。
セックスってのは選択肢やフラグのラッシュじゃねぇか。
こんなに難易度が高いなんて思いもしなかった。
まあ、そうだよな。
一人で勝手にやるような事柄じゃないし───────相手が居て初めて成立するんだからな。
自分勝手に自分のペースで進めていいって訳じゃないだろ?
でも、こんな調子じゃ最後まで到達する前に夜が明けてしまいそうだ。
一応、共同作業……なんだろうな。