ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第十四夜
女子の考えてる事は全くわからない。
─────いや、一緒じゃね?
俺が脱がせても自分で脱いでも同じじゃねぇか。
何なんだろう?
急な事故だったし、見られたくないパンツでも履いてたんか?
幼児向けならアンパンマンとかプリキュアのパンツとかあるんだろうけど───────
小泉のケツのサイズで入るような幼児向けパンツなんて無いだろう。
上下バラバラだったからとか??
上のブラは白っぽい色だったが─────
なんかよっぽど奇抜な柄だとか、ヘンテコなパンツでも履いてたんだろうか。
俺も佑ニーサンに『ビンゴゲームの景品の余り』だっていうトンチキなトランクスやボクサーパンツ貰ったことあるし。
“人間国宝”って書いてあるボクサーパンツとか履きにくいよな……まあ、わかる気がするぜ。
今日はたまたま履いてないだけでさ、俺だって変なパンツ履いてる日にこんなことになったら焦るもんな。
まあ、俺はなんだって構わないし笑ったりなんかしねぇけどさ。
小泉が気にするなら仕方がないよな。
それはともかく。
こっからが山場じゃねぇか。
どうすんだよこの状況をさ?
さんざんダメ出しされてもうそんな雰囲気じゃなくなってるし。
どうやって持ち直せばいいんだ?
暗がりの中、俺は漠然と小泉を見つめた。
小泉は視線を逸らし、黙ったままで何も言わない。
普通はこの状況だとどうするんだろう。
どうやるのが最善なんだ?
俺には気が利いた台詞なんて言えないし、紳士のような気遣いも出来ない────
だけど。
何もしないままってのも良くないよな──────放置してるみたいだし。
俺は慎重に手を伸ばし、小泉の下腹部にそっと触れた。
「………っ!!!」
小泉が身体を強張らせる。
そろりと触れたはいいものの、ここから先どうすべきかっていう判断が出来ない。
そもそも暗闇なのも相まって、何も見えないしどうなってるのかもわからないんだ。
傷付けたりしないように──────俺は自分の指を温かく柔らかい部分にゆっくりと沈み込ませた。
熱を帯びた感触が指先から伝わって来る。
何かに触れた指の腹を小さく動かした。
「………ひゃっ!?」
小泉の身体がビクンと仰け反り、大きく反応する。
「……っ!……あ、駄目っ………!」
涙目の小泉は顔を真っ赤にして俺にこう訴えてきた。
「……そこ……ダメっ……!」
ダメなんだ。ここ触られるの──────
まあ仕方がない、嫌ならしょうがないよな。
爪は切りすぎるほど切ったんだが────もしかして痛かったとか?
小泉が触られたくない場所を触っちまった?しかも二回目?
だとしたら最悪じゃねーか。
俺は動きを止め、触るのを辞めた。
俺はどこまでも最悪な選択肢しか選べないんじゃないか?そんな気すらしてくる。
俺って絶望的に向いてないんじゃ無いだろうか。