ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第十二夜
人は見かけによらねぇんだな。
─────小泉の身体って意外と凹凸があるんだな。
ストンとしたストロー体型だとばかり思っていたのに。
予想より大きかった胸に、なだらかな曲線の腰。
尻から太腿にかけてのラインは想像していた以上に肉付きがいい。
全体を見渡すと──────まあ、そう悪くないよな。
そんなことをぼんやりと思いながらも3本の指先をそっと肌に滑らせた。
小泉の身体が強張っているのが伝わってくる。
緊張してる?
それとも触られるのを我慢してる?
こんな時、何か言うべきなんだろうか。
普通のカップルなら───────
『綺麗だよ』とか『可愛いよ』みたいな事を言ったりする?
俺も何か感想を述べるべき?
仮にも小泉は女子なんだし──────
決死の覚悟で裸を晒してんのに俺がノーリアクションだったら傷付くだろうか。
小泉のヒップから太腿へのラインをそろりと掌でなぞる。
「………っ!」
小泉が思わず声を上げる。
しかし、考えた末に俺の口から出た言葉は我ながら最低なものだった。
「……センセェってガリガリかと思ってたら意外に乳とケツあんじゃん」
言った後でしまったと思ったがもう遅かった。
─────俺は何を言ってんだ?
言うにしてももっとオブラートに包んで言うべきじゃないか。
「……は!?」
小泉がブチ切れた気配がした。
ヤベぇ、めっちゃ怒ってんじゃん。顔とか真っ赤だし。
「あ、いやそれは……」
なんとか弁解しようとするが言葉が出てこない。
小泉がプイと視線を逸らす。
「………そういうのってセクハラだろ」
蚊の鳴くような声で小さく小泉が呟いた。
“セクハラ”
うん、まあそうなんだろうけど──────
俺らってセックスしてる真っ最中だよな?
こういう状況でもセクハラって成立すんの?
というか、セックス中のセクハラとは??
「????」
俺はますます訳が分からなくなった。
「……あ、いやその変な意味じゃなくて!」
とりあえず俺は弁解しようとするが言葉が続かない。
この状況で『変な意味じゃない』ってどういう意図の発言だよ。もう滅茶苦茶だ。
「……こうしてるセンセェってめっちゃ可愛いって思って!」
俺は慌てて取り繕う。
っていうか、取り繕えてねぇ。
小泉は耳まで真っ赤になっている。
ますます怒らせちゃったじゃねーか。
もうさ、どうする?挽回とか無理そうじゃんこんなの。
俺は更に誤魔化すように小泉のショーツに手を掛けた。
「あ、あのさ、そろそろ─────脱がせていいか?」
まあ誤魔化せてねぇけどな。