ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第十夜
そうスムーズにはいかないんだな。
くすぐったい?
ダメって事だろうか?
それともなんか嫌だって意味なのか?
俺は動きを止めて小泉の顔を見た。
「………」
小泉は無言で目を逸らす。
くすぐったいって事は痛いって訳じゃないんだろうけど──────
あまりベタベタ触らない方がいいんだろうか。
寧ろ触っちゃダメとか?
触らないでおくべき?
「???」
いや、勝手に判断するより訊いた方がいいかもしれない。
「……その……痛かったり嫌だったらすぐに言ってくれたら止めるから────」
俺、何も解ってないからさ、という言葉に小泉は小さく頷いた。
しかし──────
くすぐったいって言われたら躊躇しちまうよな。
余計な事はしない方がいい?
極力触らずに最後までするのっては可能なんだろうか??
そういうのが当たり前だったりする?
やっぱり俺だけが解ってないのか?
戸惑いながらも俺は小泉の着ている裸ワイシャツ(正確にはカッターシャツだが)のボタンを慎重に外していく。
第二ボタンから留められたボタンは下ろしたてのシャツのせいか、やや固い気がした。
自分の手が少し震えているのがわかる。
俺はゆっくりとボタンを最後まで外した。
シャツがはだけて小泉の身体が露わになる。
シャツの下─────ブラとショーツだけの無防備な姿。
俺はゆっくりと────シャツと脇腹の隙間から小泉の背中に手を回した。
ブラのホックを手探りで探し、勢いよく外す─────つもりだった。
ブラのホック。小さな金具。
しかし。
どんなに指を滑らせても金具が見つからない。
ホックがあると思しき場所を念入りに探っても指先はプラスチックみたいな感触しか掴めない。
え?
ホックが無い?そういうデザイン?
こういうブラってどうやって外すの?
想像してたブラってのは────後ろに金具のホックがあって、留める金具もあって、ってイメージだったんだが─────
ツルツルしたプラスチックのパーツはあるけど、ボタンみたいな感じもしない。
押しても引っ張っても外れる様子もない。
ブラって取れないのか?
どうやって外す?
焦った俺はブラを上にずり上げた。だって取れねぇし外せねぇし仕方ないだろ?
「………っ!?」
小泉が小さく悲鳴を上げる。
思っていたよりやや大きめの胸が俺の目の前で小刻みに震えていた。
小泉って良くてAカップくらいだと思ってたのに────CかDくらいはあるんだな。
普段、ダボっとしたTシャツやジャージばっかり着てるからちっともわからなかった。
そうだよな。
お互いに裸になって──────────初めてわかる事ってのもあるかもしれない。
ブラの外し方って教科書に載せといて欲しい。わかんねぇから。