ep6『夢千夜』 “壊れた夜” 第九夜
どうすりゃいいんだ
思った以上にぎこちない動き。
錆びついたロボットみたいにガタガタじゃねぇか。
なんかさ、ムードも何もあったもんじゃないよな。
仕方がない。これは俺達にとっちゃあ『作業』でしかないんだ。
無言のうちに俺と小泉は顔を見合わせる。
お互い無言のまま、一瞬の沈黙が流れた。
それぞれ言いたいことはあるって感じなんだが────お互いにどう切り出していいかわからないんだな。
若干気まずくなりながらも俺達は『作業』に戻った。
だけど───────
こっから先ってどうすりゃいいんだ?
出たとこ勝負と言う訳ではないが、俺は見切り発車してしまったことを心底後悔していた。
もうちょっと小泉にあれこれ聞いてからの方が良かったんじゃないか?
なんなら、小泉に逐一指示を出してもらいながら『実行』するとか?
それなら怒られることもダメ出しされる事も無いだろう。
で、どうする?
こういう時って─────みんなどんな手順でやってんの?
いや、それよりも、だ。
そもそも服ってどうやって脱がせんの?
は?どうやって?
どのタイミングで?
どうしていいかわからないので誤魔化すように───────俺はやや強めに小泉の細い肩を抱き締めた。
こんな事なら御月や概史にちゃんと聞いておくんだった。
前回のあの話しぶりじゃ、御月もやる事はやってるって感じだったし─────
もしかしてこの世界で俺だけがちゃんとわかってないのか?
御月も概史も………あの岬京矢や佑ニーサン、フーミンだって───────
世の中の男は誰にも教わらずにちゃんと完璧に女子をリード出来てるのに……俺だけが出来てないのか?
俺は途端に不安に襲われた。
心臓がバクバクと音を立てている。
間がもたないので苦し紛れに小泉の髪をそっと撫でた。
小泉の心臓もドクドクと音を立てているように感じられた。
小泉も緊張してるのか?
そうだよな。怖いよな。小泉の方がさ。
俺みたいな危なっかしいのに身体を預ける羽目になってる小泉の方が何万倍も不安だろう。
無免許医師に開腹手術されるくらいのヤバさがあるもんな。
俺なんかとヤルる羽目になってる小泉がなんだかとても気の毒に思えてくる。
だったらせめて──────
ちょっとでも負担や痛みが軽くなるように─────
出来る限り、慎重に『作業』を進めてやらないとな。
俺は唇をそっと小泉の首筋に這わせた。
首筋と鎖骨を指と唇でそっと触れる。
普段なら触れることのないような場所。
ビクンと小泉の細い身体が小さく跳ねた。
「……ちょっ……待っ……!」
小泉が小さく呟く。
「……え?……どうかしたか?」
俺が訊くと小泉は申し訳なさそうにこう言った。
「………その……なんかくすぐったくて……」
早くも挫けそう。