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ep5.5『TALKING ABOUT SEX(again)』 fortune teller

開始前に完敗なんだが。

そこから先はよく覚えていない。


概史が気を利かせて出してくれたチョコパイも粘土のような味と食感しかしなかった。


とりあえず、何ラウンドか対戦はしたのだが─────


あれだけ練習したコマンドは出ねぇし、飛べば対空で落とされるし、起き上がりにハメ技を喰らうわで散々だった。


一応、トータルで勝ったと言えば勝ったのだが───────


何やら気を遣われて『接待プレイ』みたいな感じになったのも居心地が悪かった。


てか、ゲームは概史の方が強いんだよな。


俺は何一つ概史には敵わない事を改めて思い知らされた気がして暗澹たる気持ちになった。


この後バイトの予定があるってフリをして、さりげなく切り上げて来たはいいが。


──────ミニ四駆やベイブレードみたいな遊びの延長でセックスしてんのか概史は?


しかも、ポケモン図鑑みたいなノリで『48手図鑑』を完成させているときている。


俺が小学生の頃なんてポケモンや遊戯王で頭が一杯だったからな。どうなってんだよアイツ?


セックスってのは──────こんなノリでカジュアルにやるモノなんだろうか?


中二で14歳の御月は彼女の心身を大切にする為に童貞の状態をあと4年は貫くつもりでいる。


その一方で小六、12歳の概史は何の疑いもなく無邪気かつ気軽にセックスしている───────


世の中の俺以外の人間にとって────セックスってどういう意味があるんだろう?


俺には何もわからなかった。


結局、俺は童貞のままだし─────


誰かを好きになったりもしていない。


おまけに呪われてると来たもんだ。


俺が理解しようがしまいが関係ない。


俺はセックス出来ないし、すべきじゃないんだな。


きっと俺にはその資格がない。


この世界でただ一人、俺だけが『まっとうにセックスする権利』が最初から無いんだ。


もし、俺にあるとしたら──────


時間を戻るためだけの『手段としてのセックス』だけなんだろうな。


俺は誰も好きにならないし、誰かに好かれる事もないんだ。


結局のところ──────俺は一生一人で居るべきなんだ。


それが一番、誰も傷付けずに済む唯一にして絶対の方法なんだろう。


更に焦げ付いてしまったメンタルを抱えた俺は、それ以上何も考えられず行く宛もなくただトボトボと歩いていた。


周囲はシンと静まりかえっている。


俺以外誰も居ない道路。


不意に─────鈴の音が聴こえた気がした。


シャン………という不可思議な音が何処からか発せられている。


俺は立ち止まって周囲を見渡した。


誰も居ない。


しかし。


この音には聞き覚えがあった。


もう一度周囲を見渡した後、突如として俺の視界に出現した人物。


鉄製の箱を被った人間。


─────それはいつか見た“ハコニンゲン”だった。


ハコニンゲンが少し頭を揺らすだけで周囲に鈴の音が鳴り響く。


幾千もの鈴の音。


不可解な存在。


男か女か、老人なのか若いのか。


何もわからない。


ハコニンゲンは無言のまま頭の箱の蓋を開ける。


ゴソゴソと何かを取り出し、そっと俺の目の前に差し出す。


─────何だ?


俺の手のひらに置かれたもの──────


それは焼き菓子のようなものだった。


透明なパッケージで個包装された小さな焼き菓子が一個。


「え?」


俺が顔を上げるとハコニンゲンは跡形も無く消えていた。


餃子を更に折り曲げたような奇妙な形状の焼き菓子。


俺は袋を開け、焼き菓子を齧ってみる。


中は空洞のようだが、中に紙片が入っていた。


焼き菓子の中に紙?


昔、爺さんの知り合いに『おみくじせんべい』とかいうお土産を貰ったことがあるが────


それに近いものだろうか。


俺は出てきた紙片を広げてみる。
















そこには毛筆でただ一言、『まだ』とだけ書かれていた。

そういや、「フォーチュンクッキー」ってのもあるよな。コレってどっちだろ?

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