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ep5.5『TALKING ABOUT SEX(again)』 自己嫌悪

なんか、全部捨ててラクになれたらいいのに。

御月は驚いたように俺の顔を見た。


そうだよな。


()もない“のにこんな状態にはなんねぇ。


「あ、悪ィ。なんか突然言われてもわかんねぇよな」


ちょっと女子とイロイロあってさ、と俺は付け加えた。


「……そうか」


御月は静かに頷いた。


「まあその、この辺は話せないんだけど今はもう居ない女子で─────」


だけど自分の事とかマジで嫌になったっつーか、と抱えていた感情を少しずつ吐き出す俺を御月は黙ったまま見つめる。


「なんかさ、俺の身体ってすごく汚い気がしてさ。思い出したくないのに勝手に身体が拒絶するっていうか」


心と身体がバラバラでさ。意識してないのに勝手に胃から食ったもんが逆流してくんだよ、と俺は苦笑いしながら言った。


「な?意味わかんねぇだろ?」


ちょっと冗談みたいなノリで話そうと思ったんだ。


あんまり重いと聞かされる方にも負担になるだろうからな。


だが、俺の予想とは真逆のリアクション────御月は悲しそうな表情を浮かべた。


「……汚いなんてどうしてそんな風に思うんだ?」


おれは佐藤ほど真っ直ぐな人物を見たことがない、と御月は真剣なトーンで言い放った。


御月ってヤツはいつもこうなんだよ。


何回時間を戻ってもこれは変わらない。


いつも俺に優しすぎるんだ。


御月だけだぜ?俺にこんな事を言ってくれるのは──────


「おいおいおい。いくらなんでも買い被り過ぎだろ」


それに、と俺は続ける。


実際汚ねぇのはホントのコトだしな、と俺は強調した。


ホントなんだ。


自分で自分の身体が嫌いで仕方がなかった。


「なんで人間って─────男ってだけでこんな機能が身体に付いてるんだろうな。俺はこんなモン欲しくないのに」


一度話し出すと止まらなかった。


「ガキの頃は『ションベンするための部位』だって完全に思ってるワケじゃん?それがさ、いざこの年齢になって『実はこんな機能がありました』ってスキルのロック解除みたいな真似されてもさ、戸惑うじゃん?どう扱っていいかわからんし」


だったら最初っからそう言えっての、って思うじゃん?と俺は半ばヤケクソ気味にブチまける。


「……そうか」


御月は少し驚いたように答える。


「……言われてみれば確かにな」


御月は頷いた。


あれ?俺のワケわからんハナシに納得してくれてんの?


「……佐藤の言うことにも一理ある。『この器官は従来とは違う用途でも使えます』と言われてもにわかには信じ難いし─────」


誰かが正しい使い方を教えてくれると言う訳でもないからな、と御月は考え込むような様子を見せた。


「それだよそれ!なんで最初からちゃんと教えといてくんねぇんだよ!って思うよな?」


俺も頷く。


広い風呂場に俺たちの声だけが響く。


「なんかさ。俺、今回マジで嫌になったんだ。こういうの。セックスとかなんだとか全部。自分で自分のこと汚いって思えて仕方なくてさ─────」


俺がそう言うと、御月がすかさず反応する。


「……いや、でもそれを言うなら……これは佐藤だけの問題じゃないんじゃないか?」


「え?」


聞き返した俺に対し、御月はこう続けた。







「……男子もそうだが……女子はもっと大変な物を背負わされてるんじゃないのか?」



なるほど、確かにそうかもしれねぇ。

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