ep5.5『TALKING ABOUT SEX(again)』 後遺症
こっからは番外編だ。
俺はここ数日、身体の不調に悩まされていた。
目の前の中空に記憶がフラッシュバックし、浮かび上がって見える。
授業中でも登下校中でもお構いなしだ。
脳裏と眼前に浮かび上がる光景。
暖炉のある部屋。ロッキンチェアの横に置かれたバスケット。
柔らかい色合いの毛糸の玉と小さな小さな靴下。
赤ん坊を抱く夢野くるみ。
その横で微笑む岬京也。
幸せな家族。
赤ん坊は眠っているのか、ピクリとも動かない。
男の子だろうか?
女の子だろうか?
まだ聞いてなかったな。
そう思って俺は赤ん坊の顔を覗き込む。
グルリと赤ん坊の頭が180度回転し、こちらを向く。
ゴトリと音を立て、赤ん坊の頭は地面に落ちる。
血まみれの赤ん坊。
「─────どうして殺したの?」
幼い子どもの声が響く。
朝でも夕方でも勝手に白昼夢は出現する。
俺の精神は丁寧にゆっくりと─────でも確実に削られていく。
俺が自分で決めてやったことだ。
怨まれるのは当たり前だろう。
夢野と岬の赤ん坊。
そうだよな。
同じ『存在することが許されなかった胎児』なのに。
俺だけ生き延びてる。
こんなのズルいよな。
罰を受けるのは当然なんだ。
だけど。
もしかしたら俺は─────罰せられる事で安堵しているのかもしれない。
世界中で俺だけしか……その赤ん坊の存在を認識出来ないんだ。