ep5. 『死と処女(おとめ)』 検閲済み記録
見せられない内容って意味なのか?
俺は見ない方がいい?
は?
いつもとは違う小泉のリアクションに俺は戸惑う。
相当マズいコトをやらかしている?
それとも、見るに耐えない最悪な失態?
確かに俺に記憶はない。
だけど。
なんとなくなんだが凄く嫌な感じがするんだ。
けどさ、だからってこのままにはしておけないだろ?
─────俺には知らないフリや見ないフリなんか出来ない。
どんなに自分自身が傷付いたとしても。
自分で自分を嫌いになったとしても。
「俺は自分のやったことに対して、最後まで向き合う義務があるんじゃないのか?」
そうだろ?と俺は小泉の目を見た。
小泉は眉間に皺を寄せ、手にした文庫本に視線を落とす。
なあ、と俺はもう一度小泉に念押しした。
「これって毎回『答え合わせ』みたいな感じじゃねぇか。だからさ、これを確認しないと先には進めないだろ?」
俺は立ち上がり、躊躇している小泉の手から文庫本を奪う。
小泉が俺にこれを読ませるのに罪悪感を感じるって言うなら─────俺が無理矢理にでも“取った”テイにするしかないんじゃね?
俺なりに考えた結論だった。
「待て!」
俺から文庫本を奪われた小泉は必死で俺を制止する。
「じゃあせめて、コレを─────」
小泉は俺の手に握られた文庫本にするりと栞を滑り込ませた。
「後半の部分だけなら……まあ、読んでも大丈夫だろう」
俺は手にした文庫本をパラパラと捲り、栞の挟まれたページを探す。
「“栞から後”のページを読めって言うのか?」
しかし、ほんの一瞬─────飛び込んで来た文字列を目にした瞬間、俺は後頭部をフルスイングされたような衝撃を受けた。
“栞から前”のページ─────コンマ何秒かの間だけだったが、確かに俺は見てしまったんだ。
全身からサッと血の気が引く感覚が自分自身でもハッキリと知覚出来た。
恐らく夢野のセリフだろう。
『あたし、佐藤君に⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎欲しいから─────』
それって─────