ep5. 『死と処女(おとめ)』 藪の中の通学路
俺は何も出来なかったんだな。
結局、俺はどうすればいいんだろう。
岬との対峙。
─────岬京矢という人物。
別にコイツは極悪人という訳じゃ無いんだ。
言ってることは概ね正しい。
間違った事は多分言ってないんだ。
だからこそ、俺は何もわからなくなっていた。
俺は、今までに俺と向き合って話をしてくれたヤツの顔を順番に思い浮かべた。
─────夢野くるみ。
水森唯。
上野綾。
佐々木七海。それに小泉。
─────そして岬京矢。
誰も嘘はついてない。
俺に対して、それぞれの言葉でキチンと向き合って話してくれたと思うんだ。
誰が正しくて誰が間違ってるとか、そんな事は問題じゃねぇんだ。
だって全員が正しい事を言ってるし、誰も間違ってはないんだ。
だからこそ。
俺は俺自身と、それから夢野に対してもキチンと向き合うのがスジってもんだろう。
ぼんやりと歩きながら長い道のりを歩く。
恐らくだが、残された時間はそう多くないだろう。
このまま放置すれば─────
いずれ夢野の耳にも『新彼女』の話は入ってくるだろうな。
時間の問題だ。
夢野がそれを知った時、どう行動するだろう。
俺は首を振った。
その結果が、前回のあの結末だったんじゃないのか?
俺はそれを阻止しなきゃならないし、その義務があるだろうな。
だって知ってしまったんだ。見過ごせないだろ?
目の前で誰かが死ぬのを見て見ぬフリなんて出来ねぇよ。決まってるじゃねぇか。
俺は何も結論を出せないまま、夢野の自宅に向かった。
何が正しいかってのは主観でしかないからな。