ep5. 『死と処女(おとめ)』 存在の証明
どうやったら嘘じゃないって証明出来る?
さっきも言ったと思うけど、と岬は少し苛立った様子で答えた。
「その証拠は─────それが嘘じゃないと証明出来る何かが有るって言うのかい?」
俺は黙った。
そんなものは無い。
だけど。
俺にはわかるんだ。
絶対に夢野は嘘なんてついてない。
本当に妊娠してるんだ。
「出せないだろ?証拠なんて」
だってこれは彼女の狂言なんだから、と岬は冷たく言い放つ。
「─────違う!」
俺は岬の言葉を否定した。
どうやったら岬に信じてもらえるんだ?
「なあアンタ。夢野に約束したんじゃないのか?『模擬試験が終わったら将来のことを話し合おう』って言ったんだろ?」
ちゃんと夢野と話し合うつもりなんだろ?と俺は岬の目を見た。
「そんなのは方便だよ。第一、彼女だってそれを解ってるはずさ」
岬は鼻で笑うように言った。
「は?」
「君もしつこいね。もう終わったことなんだよ」
彼女だって薄々察してるんじゃないのか?だから自分でここには来れないんだろう?と岬はうんざりしたような表情を浮かべた。
どうすればいい?
コイツに何を言っても信じないだろう。
だって最初から『夢野が嘘をついている』って結論ありきで話してるんだぜ?
その根拠になる得るもの─────夢野が近い友人を裏切ったという話─────
それはそれで事実なんだ。
まず、俺にはその前提が覆せない。
『夢野くるみは酷い人間だ』と言われてしまえば俺にはどうすることも出来ないのかもしれない。
上野や佐々木に言われた時みたいに。
俺はあの二人に反論らしい反論は出来なかった。
じゃあやっぱり、俺はコイツには何も言えずに終わるのか?
俺は首を振った。
「なあ、アンタ。あの話が嘘でも本当でも─────最後に一回、夢野に会って話をしてやってくれないか?」
お互いに話し合わないと見えてこないことってあるんじゃないのか、と俺は懇願するような気持ちで岬に言った。
だってそうじゃないか。
このまま終わるなんてあり得ない。
会って話さなきゃわかんないことってあるだろ?