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ep5. 『死と処女(おとめ)』 ブラックマーケット

付き合ってたのに結構な事を言うもんだな。

それってどういう事だよ?


具体的に何をされたって言うんだろう。


けど、付き合っている二人の間の出来事だ。


第三者の俺がここまでノコノコやって来ておいてこんな事を言うのもなんだが─────


センシティブな事柄だからな。


興味本位で聞きに来たと思われるのも癪に障るし。


俺は岬の次の言葉を待った。


「いつ頃だったかな。彼女の方から『妊娠したかもしれない』っていう相談を受けたのは─────」


ああ、2月頃だったかな、と岬は銀縁の眼鏡のフレームに人差し指で触れる仕草をしながら言った。


「それは吃驚したさ。何しろ急だったし……でも、僕なりに彼女を気遣いもしたんだ」


もし堕すなら、もしも産むことになったら。必死で調べもしたし、あの時は進学を断念しようかとも考えたよ、と岬は真剣な表情で続けた。


え?


この成績優秀な学校の王子様が進学を断念?中卒になるって事だよな?


岬は岬はなりに考えてたって事なのか。


もしかしてコイツは思ってたほど悪人て訳じゃないってことか?


……けどね、と岬は声のトーンを変えた。


「僕は一睡も出来ずに連日、ずっと悩んでいたのに─────彼女と来たら数日後に『やっぱり勘違いだった』なんてあっけらかんと言い放ったんだ」


「勘違い?」


そう、と岬は頷いた。


「─────全く、僕と来たら馬鹿みたいだったよ。あれだけ真剣に悩んだのに。けど、間違いならそれに越した事は無いからね」


僕は大いに安堵したさ、と言う岬の言葉に俺も頷いた。


俺も男だからなんかわかる気がするぜ。


だって俺らってまだ中学生じゃねぇか。


大学生とか社会人でも『妊娠した』って言われたらさ、男なら大体パニックにならねぇか?


今のご時世、赤ん坊を育てるってのは社会人でもハードモードだってのは俺だって知ってる。


家族を養えるほどの給料を稼げるヤツなんてほんのひと握りだからな。


俺、バイトをあちこち掛け持ちしてるだろ?だからそういう気持ちってのは痛いほど理解できるんだよな。


「そっか、間違いだったんだな」


そこまで言って俺はふと、話がおかしいことに気付く。


さっきさ、岬は夢野の事を軽蔑するとか言ってたよな?


その流れでこの話?


それに、2月って言ったか?今は9月だろ?


あれ?


「あの話以降、僕は彼女と少し距離を置くようになったんだ。受験生って言うのもあるし、同じ事を繰り返しちゃいけないって思ったのもある」


だけどね、と岬は俺の顔を見ながら続けた。


「それ以降、ぼくはどうしても彼女に対して不信感が拭えなくなってしまったんだ」


なんでだよ、と訊ねる俺に岬はこう答えた。





「使用済みの妊娠検査薬─────ネットでも画像は拾えるし、フリマアプリで売買もされてる。自己申告でどうにでもなる事柄じゃないか」







は?そんなん売ってんの?

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