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ep5. 『死と処女(おとめ)』 設問と解答

そんなに面白い答えか?

俺としては必死で捻り出した答えだったのだが、岬に小馬鹿にされたような気がして少しムッとした。


「俺は頭は良くねぇしアンタみたいに女にモテたことねぇんだ。そんなんわかる訳ねぇだろ?」


じゃあ正解ってヤツを教えてくれよ、と俺は不機嫌さを隠さずに言った。


「……そうじゃないんだ。気分を害させたなら謝るよ」


岬は心外そうに答えた。


「いや本当だよ。そんな風にキチンと答えてくれたのは君が初めてだったからね。みんな判子で押したように同じ事ばっかり答えてくるもんだからさ」


だからちょっと意外だったんだ、と岬は少し表情を柔らかくした。


「俺の答えを秀才様がお気に召されたようで何よりだよ」


俺が皮肉混じりにそう言うと岬は肩をすくめた。


「本当に君は見かけよりも繊細な人間なんだね。だけど、そんな風に卑屈になるもんじゃないよ」


度を越した卑屈さは傲慢でしかないし、行き過ぎるとそれは暴力と変わらないからね、と岬は何かを思い出すように呟いた。


ん?


同じことを誰かから聞いたことがある気がする。


誰だったろうか?


俺は記憶の糸を手繰り寄せようとしている間に、岬は話を続けた。


「人と人との間で一番大切なもの─────僕はそれは『信頼』だと思っている」


「信頼?」


「そう。信頼。友人でも恋人でも仕事の取引相手でも─────人間関係は全て『信頼』で成り立っているとは思わないかい?」


なるほど信頼か。


俺はてっきり、『愛』だの『夢』『希望』とか言った掴み所のない概念で語って来られるかと思っていたので何か拍子抜けしてしまった。


岬ってのはモテモテの王子様でキザな奴かと思ってたんだけどさ、こういうとこは普通の感性なんだな。


俺は大きく頷いた。


「なるほどな。わかる気がするぜ」


確かに、ダチでも女でもバイト先の先輩でも─────信頼してるから持ちつ持たれつで上手くやってるって感じだもんな、と俺は相槌を打った。


「そうだよ。友人でも恋人でも取引先でも……お互いに信頼があって成り立っている関係だろう?」


だから一方的にそれを壊してくるような相手だと付き合いは続けられないよ、と岬は静かに言った。


「……それって?」


俺が聞き返すと岬は思い出したくもないといった風に答えた。


「恋人の愛情を確かめる為にそういった行動に出る者も居るってのは知っているけどね。まさか彼女が僕に対してそんなことを仕掛けて来るなんてさ」


稚拙すぎるよ、と岬は心底軽蔑するように吐き捨てた。







「先に信頼を壊してきたのは彼女の方だろう?僕は彼女に失望したんだ」



え?どういうこと?喧嘩か?

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