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ep5. 『死と処女(おとめ)』 Chantons L'amour

付き合ってた筈なのにどうしてこう冷たいんだ?

「─────夢野はそんなヤツじゃねぇよ!?なんでそんなこと言えんだよ!?」


お前ら付き合ってたんじゃねぇのかよ!?と俺が強めに言うと岬は呆れたような表情を浮かべた。


「ふうん?じゃあそういう君は彼女の何を知ってるって言うんだい?」


それは、と俺は言葉を詰まらせる。


俺の知ってる夢野?


それは岬の知ってる夢野とは別人なのか?


俺の知らなかった夢野の側面が存在したように─────


黙った俺を見下すように岬は口を開いた。


だが、その言葉は意外なものだった。


「一つ君に質問したいんだけど」


質問?


岬が俺にか?


「人と人との間に存在するものがあるとして─────何が一番大切だと思う?」


は?


なんだそれ?


禅問答かよ?


てか、唐突すぎね?


抽象的な岬の質問に、俺は面食らった。


意味がわからなさ過ぎた俺は再び固まった。


え?


今、俺たちってさ、『岬と夢野が付き合ってる件』について話してるんだよな?


どゆこと?


人と人との間で大切なものって……え?愛?


この俺に『愛だろ』とか言わせたい訳なのか?


いやいやいや………


容姿端麗な秀才様の感性は全く俺にはわからない。


それどころか別次元の話に思えた。


てか、この質問で『愛』以外の正解ってある?


え?違う?


それよりさ、なんて答えるのが正しいんだよ?


そんなことは俺にわからない。


そもそも『愛』って概念が俺にはわからねぇんだ。


だって童貞だぞ?


いやいやいや……


この俺に『愛』って言わせたいのか?


[他校の校門で愛を叫ぶ?]


どういう状況だよこれは?


しかも男同士でか?


俺は高速で考えを巡らせた。


とにかく、この男から話を聞き出すにはコイツの考えにある程度沿った答えが必要だろう。


やっとのことで俺は言葉を絞り出した。


「─────“まごころ”とかじゃねぇの?それって」


俺なりに辿り着いた、必死の答えだった。


「人と人ってさ。ある程度、腹割って話す必要とかもあるだろ?だから─────」


本音で話し合うっつぅかよ、そういうのも時に大事なんじゃねぇの、と俺は俺なりの考えを言ってみた。


フワフワとした掴みどころのない『愛』なんて概念よりは、こっちの方がしっくり来る気がしたからだ。


「ふうん」


岬は少し間を置くと、俺の目を真っ直ぐに見つめた。




「─────面白いね、君」

は?面白いか?

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