ep5. 『死と処女(おとめ)』 女子の身体と異物混入
なんだよ、怖えな。
へぇ、と俺はなるべく冷静を装った。
「具合でも悪かったんじゃね?」
ほら、女子ってなにかと体調が不安定になりやすいだろ?と俺は答えた。
佐々木の奴、どこまで知ってるって言うんだ?
俺の反応に対し、佐々木は特に気に留める様子も無く話を続けた。
「そうね。思春期の女子が体調を崩して保健室に何度か足を運ぶことは珍しいことじゃないわ」
そうだろ、と俺は頷いた。
「だけど、それがある“事件”と関連しているとしたら─────?」
俺はドキリとした。
“事件”?
今コイツ“事件”っつったよな?
どこまで知ってる?
まさかとは思うけど─────
夢野が飛び降りる結末まで読んでるって事はないよな?
俺の背中に冷や汗が流れていくのがわかった。
「事件って?」
俺はなるべく、なんでもないような素振りで聞き返した。
佐々木は机の上をトントンと指で弾く。
「ねぇ。あなたは毎日お弁当を作って持って来てるわね。それはどうしてかしら?」
ん?
佐々木はなんだってこんな事聞いてくるんだ?
「そりゃアレだろ。給食センターが休止してるからだろ?」
わかり切った事じゃねぇか、と俺は答えた。
「それじゃ、どうして給食センターは休止になったのかしら。みんな困ってるわよね?」
それは……と俺は答えに詰まった。
そこまではHRでも知らされてはいないし─────
確か、小泉も知らないような口ぶりだったよな。
「いや、そこまで知らねぇし」
佐々木は意味ありげに頷いた。
「前回、定例の『センター休止日』から数日後に給食センターは無期限の休止になったのだけれど─────」
それは複数の“異物混入”があったかららしいわ、と佐々木は俺を真っ直ぐに見て言った。
は?
「なんだそれ?異物混入?」
センターの機械がぶっ壊れてたとかなのか?と俺は聞き返した。
「その線は薄いでしょうね」
佐々木は首を振る。
「なんでそんな事判るんだよ?」
「だって……異物が発見されたのはここの中学の給食からだけなのよ?」
佐々木はやや強調するように言った。
「給食センターがカバーしてるのはこのエリア全域─────近隣の小学校や他の中学校も含まれるわよね」
なのにこの中学の給食から[だけ]異物が発見されるのって奇妙じゃないかしら?と佐々木は続けた。
「は?ウチの学校って給食ガチャ爆死ってことか?」
意味がわからない。
佐々木はさっきのファイルを再び開き、視線を落とした。
「夢野さんが保健室を利用したのは─────前回のセンター休止日の翌日から数日続けて、しかも4時限目の時間に集中してるわね」
やっぱ給食ガチャ爆死なんじゃね?




