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ep5. 『死と処女(おとめ)』 未成熟な子宮

どうするのが一番いいんだろう?

「でもちょっと待ってくれよ」


俺はふと、夢野の彼氏のことを思い出した。


「岬京矢─────だっけ。コイツ確か『10月中旬の模試が終わった後に将来のことを話し合おう』とかって言ってたんだよな?降ろさせるなら行動は早い方がいい筈だろ?」


“将来のこと”っていう言い回ししてるってことはさ、結婚とか視野に入れてんじゃね?と俺は一つの可能性を指摘した。


「産ませるって意味か?」


小泉はまた難しそうな表情を浮かべる。


「夢野くるみはクラスでも小柄な部類に入るからな。身体が出来上がっていない時期に出産となると─────」


帝王切開になるかもしれんな、と小泉は赤ペンでグルグルと印を付けたカレンダーに視線を移した。


「帝王切開?腹を切るってヤツ?」


俺が聞き返すと小泉は頷いた。


「小中学生……低年齢での出産の事例も少しは聞いたことがあるが─────母体が成長途中なだけに危険と隣り合わせでもある」


一概には言えないが、大人の場合でも小柄な女性が難産になるケース(※1)もあると聞く、と小泉は頭を抱えた。


身長が俺と同じくらい……168cm前後の水森唯はクラスでも背の高い部類になるが、一方で夢野くるみは150cmくらいしかない。


「確かに夢野は若干、小さめの身長けどさ。それって何か関係あるか?」


あるとも、大アリだ、と小泉は少し青い顔で頷く。


「分娩の際、赤ん坊ってのは母親の骨盤を通って出てくるんだが……小柄な女性だと骨盤が小さいからな。赤ん坊が通ろうとすると骨盤が引っかかって出て来られなくなる事がある」


医学的には『児頭骨盤不均衡』って言ってな。帝王切開の対象になるらしい、と小泉は考え込むような素振りを見せた。


帝王切開。


夢野はハラを切るのか?


でもさ、と俺はポジティブに解釈してみようとする。


「陣痛とかめっちゃ痛いんだろ?麻酔掛けてもらってスパッと切って出してもらえば楽じゃね?」


「は!?」


小泉がマジギレしたような表情を浮かべた。


「どういう手術かわかって言ってるのか?!子宮ごと切るんだぞ?痛くない訳無いだろう?!」


「え?子宮ごと切んの?」


麻酔してスパッと切って楽に終わりだと思っていたので意外だった。


「麻酔が切れてから痛みが襲ってくるし、後陣痛っていう子宮収縮の痛みもある。その中で赤ん坊に授乳したりオムツを変えてやったりの世話もしなきゃならないんだぞ?」


「麻酔ってさ、手術後もやってくれんじゃねぇの?え?まさか切った後って麻酔なしで過ごすの?」


腹を切ったりした後ってさ、絶対痛いじゃん。そういうのって麻酔とかしてくれるって思ってたんだが違うのか?


「え?まさか切った後そのままなん?そのままで過ごすのか?」


「だからさっきからそう言ってるじゃないか」


小泉は呆れたようにため息をついた。


なにそれ。


なんかめっちゃ痛そうじゃねぇか。腹切ってそのままで回復を待つだけなのか!?え?放置?


めっちゃ怖い。


めっちゃ出血しそう。


”子宮を切る“”子宮収縮“とかの耳慣れない言葉や概念のオンパレードに俺は戸惑う。








もし仮にめでたく祝福されて出産する事になったとしても、母体は相当なダメージを受けるって意味なんだろうか。

(※1)必ずしも小柄な女性が難産になるという訳では無い。

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