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ep5. 『死と処女(おとめ)』 流れる胎児

なんだそれは?

「化学流産?」


聞き慣れない単語に対し、俺は思わず聞き返す。


流産って……腹の中の赤ん坊が死ぬことだよな?


じゃあ化学って……?


「よくわかんねぇんだけど……スマホやパソコンの電磁波とか、そういう身体に悪いモンのせいで流産したってことか?」


それとも悪いモン食ったとかなのか、という俺の質問に対し、小泉は首を振った。


「“化学”流産という単語からは何かケミカルな影響で流産したかのような印象を受けるかもしれないが─────」


実際には『化学の力で知ってしまった流産』と説明すれば分かり易いかもしれないな、と小泉は続けた。


「化学の力で─────え?なにそれ?」


どういうことだ?


そう言われてもピンと来なかった。


「平たく言えば、『一瞬だけ妊娠してすぐに流産したのを妊娠検査薬のお陰で知ってしまった』と言えばいいだろうか」


え???


なんだそれは???


そういうことってあるのか?


意味がわからな過ぎて混乱する。


「それって……検査薬は嘘じゃなかったって事か?」


ああ、と小泉は頷いた。


「正しく使えばその精度は99%以上とも言われているな」


朝の情報番組の星座占い程度の気休めだと思っていたが、そうじゃなかったんだな。


「つまり、一瞬だけ妊娠して検査薬で感知、その後に流産したっていう意味か?」


そうだな、と小泉は相槌を打つ。


は?そんな事ってある?


「え?じゃあさ。じゃあその赤ん坊はどこに行ったんだよ?」


「赤ん坊ではなくまだ受精卵程度の大きさだと思うが─────通常の生理とそう変わらない状態で体外に排出されるんだろうな」


小泉は何か難しそうな表情を浮かべた。


「多くの場合、初期流産は本人が妊娠と気付く事なく起こっていると聞くが─────」


「は?本人が気付かない?そんな事ってある???」


だって流産だろ?


めっちゃ血が出るんじゃねぇのか?


「毎月起こる『生理』のメカニズムから言えば……体外に排出されるのが受精しなかった卵子か、受精したが染色体の異常などで妊娠継続が不可能になった受精卵かの違いでしかないのかもしれないな」


そうか。


妊娠してなくても生理は来て血が出るし、一瞬だけ妊娠してても流産したらやっぱり血と一緒に体外に出てしまうってことなのか。


「でもさ、そんなに頻繁に流産ってあるものなのか?あり得なくね?」


生々しいワードの羅列に、俺はなんだかビビってしまう。


「まあ、一般的に流産自体は全妊娠の15%で起こるとも言われているらしい」


小泉はどこか心苦しそうに答えた。


え?


流産─────


人工中絶とは違って、母親の意思とは無関係に赤ん坊が腹の中で死んじまうってことだよな?


血だらけの赤ん坊が流れていくイメージが脳裏に浮かぶ。


そんな恐ろしい出来事が全体の15% ─────


多すぎじゃねぇか?!


妊婦が100人居たら、そのうち15人の赤ん坊は死んでるのか?






淡々と説明される恐ろしい事実に、俺は心底怖くなってしまった。



怖過ぎて泣きそうになる。

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