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ep5. 『死と処女(おとめ)』 “帰りの会”

水森は水森で苦しんでたんだな。

俺は静かに水森の次の言葉を待った。


自分の中で言葉や感情を整理しているのだろう。


水森の感情を出し切る為に、話しやすいペースで話してくれたらいい。


水森は俺に全てを吐露してくれるんじゃないかって気がするんだ。


確証もないのに、俺はそう信じて疑わなかった。


「─────あたしね、くぅちゃんに謝られるのが苦手だったの」


ポツリと水森が話し始めた。


俺は黙ってその話に耳を傾けた。


「くぅちゃんがあたしに謝るとき……そこにあたしは居ないんだなっていつも思ってた。夜中に送られた長文のメッセージが送信取り消しされた痕跡を朝方に見たときも─────」


くぅちゃんはいつも……自分が楽になる為、悪者になりたくない為に謝ってただけなんじゃないかっていつも感じてたの、と水森は乾いた声で呟く。


悪者になりたくない為に謝る。


その言葉の真意は俺には判らない。


だけど意味はなんとなく理解できた。


小学校の時にあった[帰りの会]


イタズラや悪さばっかりしてた俺はいつも吊るし上げられてたっけ。


そこで大抵、教師が出てきて『佐藤君、ちゃんと謝りなさい』って言うんだ。


俺はちっとも悪いなんて思っちゃ居ない。


だけど面倒だから謝る。謝る素振りを見せる。


そしたら[帰りの会]は終わるからな。


“悪いとは思っては居ないが場を収める為にとりあえず表面上は謝っとく”ってのは─────


きっと何処にでも、誰にでもあることなんだろうな。


俺の状況と夢野の状況ってのは別物だろう。


意味合いも全く違うだろう。それはわかってる。


だけど。


自己保身の為の、心にも無い形式だけの謝罪。


本当の友達って思ってる相手にはこういうのはやっちゃ駄目なんじゃねぇか?


もしもだけど─────


転校する前のマコトや、後輩の概史、それに御月レイジ─────


もし喧嘩になったとしても俺、コイツらに対してそういう事は絶対やんねぇんだ。


心にも無いことを言って謝るフリをするくらいなら思いっきり殴り合った方がマシだ。


少なくともコイツらに対してはそう思うんだ。


だけど。


女子ってのは殴り合いなんてする訳には行かんだろうからな。


「……けど、あたしも似たようなものだったのかもしれない」


水森は顔を曇らせながら呟いた。


「あたしのやってたこと全部─────」


何もかもが自己満足だったの、という水森の言葉がホームに響いた。


「自己満足って……何がだよ?」


俺は小さく聞き返した。


「くぅちゃんが死にたいって言ったとき─────あたしに出来ることなんて何もなくて」


水森が俯く。


水森は夢野から『死にたい』っていう相談を受けていた?


夢野が死に向かう理由。





それを水森は知ってるのか?





[帰りの会]って最悪な催しだったよな。ウンザリするぜ。

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