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ep0. 「真夏の夜の爪」 ㉛子どもをたくさん作りたい

楽観的すぎるのかもしれないけど。

「……あのさ、あの時、僕の言ったこと信じてくれたの……どうして?」


 マコトが子猫をガスガンで撃ってしまったあの日。


佑ニーサンの今までもこうして猫を撃っていたのか?という問いかけにマコトはただ黙って首を横に振っただけだった。


しかし少年はマコトはやってない、今日のも事故だ、と言い切ったのだ。


「だってお前、嘘つくのいつも下手じゃね?俺、何となく判るし」


少年はゴロリと畳に横になった。


マコトも真似して同じように横になった。


由江の知り合いが代表を務める非営利の動物保護団体が河川敷で数匹の野良猫を保護したというのは数日後の事だった。


マコトや少年の証言を裏付けるようにガスガンで負傷した形跡のある猫は皆無だった。


そっか、とマコトは小さく呟いたあと少年の方を顔を向けた。


「……ありがとう」


少年の視線が真っ直ぐ自分に向けられているのを感じたマコトはマサムネを抱き寄せるフリをして視線を逸らした。


 二人はそのままの体勢で寝転がって天井を見つめた。


古い家屋の天井には雨漏りしたと思われる形跡が見て取れた。


いつも一人でこうしてるの、とマコトは天井を見つめたまま呟いた。


ああ、とだけ少年は答えた。


テレビとかネットとか無いの、というマコトの問いかけにはどっちも無いなぁ、と諦めたような返事が返ってきた。


そう、少年の家には何もなかった。


唯一あるのは古いCDラジカセだけだった。


少年が神と崇める解散した伝説のバンド。


そのCDを聴くことだけがただ一つの慰めだった。


色褪せたカラーボックスに置かれたラジカセの横にはフォトフレームに入れられたボーカル男性の写真が飾られていた。


「……夜とか一人で寝るのって寂しくないの?」


そんなの寂しいに決まってンだろ、と少年は小さく答える。


「早く大人になりてぇなあ」


「……どうして?」


だって面倒くさそうだよ大人って、とマコトは反論する。


自由がないよ大人なんて、と。


「大人になって早く働いて金を稼ぎてぇし。まともな生活してぇし。今は佑ニーサンが紹介してくれたバイトやってっけど子どものお手伝いレベルだしよ、ちゃんとした仕事って訳じゃねぇし」


「……そんなに早く働きたいんだ?」


「それもあっけどよ、早く嫁さん貰って結婚したい。あと毎日セックスしたい」


結局そこかよ、とマコトは少し笑った。


「……どんな人がタイプなの?」


「年上の料理上手な女がいいよなぁ。あと子どもは沢山欲しいし」


……何人欲しいの?と尋ねるマコトに少年は少し照れながら答えた。





「野球チームが出来るくらい」


産後すぐは子供ができやすい

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